●こんなお話
1897年だかの小さな村で村か出ててはいけないという掟の中、登場人物たちの恋愛とか掟についての話。
●感想
冒頭、子どもの葬儀の場面から物語が始まり、赤い花が不吉であるとして埋められる描写や、森から聞こえてくる不気味な声に怯える村人たちの姿が描かれる。
男性の主人公は、閉ざされた村の外に出てみたいという想いを年長者たちに訴えますが、母親からは、かつて父親が買い物に出かけた際に命を落としたことを語られ、外の世界の危険さが強調される。一方で、女性の主人公は盲目でありながら「色が見える」と語り、友人と遊ぶ無垢な姿が描かれたり。彼女の姉は男性主人公に恋心を抱き告白するものの、想いは届かず断られてしまいます。
ある日、村に怪物が現れたという騒ぎの中、人々が避難するなかで女性主人公は男性主人公の到着を待ち続け、怪物に襲われそうになる寸前で助けられます。その後、2人の思いは通じ合い、婚約が決まりますが、嫉妬に駆られた友人によって男性主人公が刺され、重傷を負う。
命を救うためには外の世界から薬を入手する必要があり、女性主人公は意を決して森を抜ける決意。父親はその決断を尊重し、年長者たちの反対の声を説得によって抑えます。
森の中では再び怪物に遭遇しますが、落とし穴に誘導して退けます。ここで、怪物の正体が友人であったことが明かされます。実はこの村は、年長者たちがかつて近親者を現代社会で失い、外の世界に絶望して作り上げた独立したコミュニティであることが判明する。
女性主人公はついに森を抜け出し、若いレンジャーと遭遇。彼から薬を受け取り、無事に村へ戻ってきておしまい。
ジェームズ・ニュートン・ハワードによる重厚な音楽、ロジャー・ディーキンスによる詩的で美しい映像、そして実力派俳優たちの卓越した演技が織りなす本作には、シャマラン監督ならではの独創的な世界観が巧みに混ざり合い、非常にユニークな体験でした。
特に冒頭の揺れる木々に包まれたタイトルクレジットからは、映画全体に漂うミステリアスで緊張感ある雰囲気が存分に伝わってきます。また、小さな村の日常風景から始まり、恋愛や友情、そして村の禁忌が少しずつ明かされていく過程も非常に丁寧。
主演のホアキン・フェニックスの寡黙ながらも芯の強い演技、そしてブライス・ダラス・ハワードの盲目ながら勇敢なヒロイン像も見事。ウィリアム・ハート演じる年長者が、若者たちの希望を信じて掟を破る場面では、感情が揺さぶられます。
リアリティという観点から見れば、着ぐるみの存在などに違和感を抱いてしまいました。しかし、物語の核心である“悲しみからの逃避”や“隔絶によって築かれた理想郷”というテーマには一考の価値があり、村という設定が面白かったです。
主人公が危機に直面し、ヒロインがそれを追い求める中盤のシークエンスでは、美しい映像と音楽が見事に融合しており、非常に印象的なシーンとして記憶に残り、突っ込みどころもありつつ、シャマラン監督の独自性と美的感覚が光る、魅力的な作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2021/02/02 U-NEXT 2025/05/16 WOWOW
監督 | M・ナイト・シャマラン |
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脚本 | M・ナイト・シャマラン |
出演 | ホアキン・フェニックス |
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エイドリアン・ブロディ | |
シガニー・ウィーヴァー | |
ウィリアム・ハート | |
ブライス・ダラス・ハワード |