映画【太平洋の地獄】感想(ネタバレ):三船敏郎×リー・マーヴィン共演!二人だけで描く異色の戦争映画の魅力

hell-in-the-pacific
スポンサーリンク

●こんなお話

 太平洋上の無人島で漂流した日米の軍人が衝突を繰り返しながら無人島から脱出しようとする話。

●感想

 この作品は、わずか100分の上映時間の中で登場するのは日本人とアメリカ人、たった2人のキャストだけという異色の映画で、最初から最後まで俳優の演技力と存在感で観客を引きつけていきます。説明らしい説明はほとんどなく、なぜこの2人が無人島にいるのか、どんな背景を持つ人物なのかといった情報も語られないまま、ただ彼らが衝突し、対立し、そして奇妙な絆を生み出していく姿を描き続けます。

 物語は、日本の軍人が無人島で生活しているところにアメリカ兵が現れるところから始まります。互いに敵と認識し合い、殺し合いを始めようとするのですが、やがて水を奪い合ったり、相手が作ったボートを流してしまったりといった小競り合いに発展していきます。時には捕虜にし合い、優位に立とうとする姿が映し出されますが、次第に「こんなことをしている場合ではない」と気づき、竹を使って筏を作り、無人島からの脱出を試みるようになります。

 この過程で少しずつ友情の芽が育ち始めます。ナイフを返すシーンなどは、互いにわずかでも心を許していくことを示す印象的な場面でした。やがて2人は別の島に辿り着き、そこには要塞が残されていましたが人の気配はなく、アメリカ兵が雑誌を発見することで既に戦争が終わっていることが明らかになります。アメリカの勝利が記されている記事を前に、状況を知らない日本兵は上機嫌に髭を剃り、酒を楽しむ姿を見せます。しかしアメリカ兵は「なぜ日本人は神を信じないのか」と問いかけ、やがて不機嫌になり、再び衝突が始まってしまう。アメリカ兵が怒りに任せて鍋を蹴り飛ばすと、近くに置かれていた爆薬が暴発し……という衝撃的なラストを迎えます。初めて観たときには意味が掴みづらく、ある種シュールな印象すら残す結末ですが、それがまたこの作品の異色さを際立たせていました。

 物語の中で日本兵は英語をまったく理解せず、アメリカ映画でありながらアメリカ兵がどちらかといえば子供っぽく、短気に描かれているところも興味深い視点でした。何よりも三船敏郎とリー・マーヴィン、この二人の俳優が全編を背負い、圧倒的な存在感で物語を牽引していきます。その熱量のある芝居に加えて、コンラッド・ホールによる美しい撮影が映像に重厚さを与えており、舞台の限られたシチュエーションを力強く映画として成立させているのも素晴らしかったです。少人数のキャストとシンプルな舞台設定でここまで引き込む力を持った作品は、なかなか出会えるものではいと感じた1作でした。

☆☆☆☆

鑑賞日:2014/06/22 DVD

監督ジョン・ブアマン 
脚本ルーベン・バーコヴィッチ 
脚色アレクサンダー・ジェイコブス 
エリック・ベルコビッチ 
出演三船敏郎 
リー・マービン 
タイトルとURLをコピーしました