映画【ザ・プロム】感想(ネタバレ):煌めくブロードウェイの舞台で描かれる多様な愛と青春の物語

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●こんなお話

 1人の女子生徒が同性愛者だからプロムが開けないという保守的な学校で落ち目のミュージカルスターがその女子生徒をバックアップする話。

●感想

 冒頭からブロードウェイの煌びやかなネオンと華やかな衣装に彩られた舞台が広がり、その中で歌い踊る姿はまさにミュージカルの醍醐味を存分に感じさせてくれます。最初のシーンから観客を惹きつける力があり、この作品の楽しさや魅力を強く印象づけていました。

 物語は、スターたちが女子生徒のためだけに動いているのではなく、世間に良いイメージを持ってもらうための戦略として動いていることが見て取れます。そうしたリアルな思惑の中で、同性愛を理由にクラスメイトからいじめられ居場所を失ってしまった女子生徒たちの苦悩も丁寧に描かれています。

 全編を通して歌と踊りが途切れることなく続き、そのエネルギーに触れているだけで心が軽くなるような楽しさがありました。多様性の尊重やマイノリティの困難をテーマにしている作品であることは間違いありませんが、問題がどれもあっさりと解決してしまう展開には少々疑問を抱かざるを得ませんでした。

 例えば、主人公のパートナーが校長である親にカミングアウトして拒絶されるシーンから、一気にクライマックスのプロムへと移行し、そこにドレスアップした母親が戻ってきて認める流れはやや急ぎ足に感じました。いじめっ子たちも、学校の“イケてる人たち”も聖書の良い部分だけを受け入れているという設定ですが、ショッピングモールで「隣人を愛せよ」と歌い出したら、すぐにプロムで笑顔で参加するという展開も、現実の変化としてはやや出来過ぎた印象を受けました。

 同性愛者のスターの母親との和解も、メリル・ストリープが電話をかける一言だけで、後ろに母親が立っていて認め合うというシンプルな演出に、深い感情の動きよりも物語の都合が見え隠れしてしまうように感じました。人の思想や信条がそんなに簡単に変わるものかと、終始考えてしまう130分でした。

 また、こうした歌い踊るスタイルのミュージカルは、やはり西洋人が演じると格別に格好良く映るのだと再認識させられます。一方で、自分はアメリカ人に生まれなくてよかったと感じてしまうほど、あの華やかなプロムの雰囲気は別世界のものでした。

 メリル・ストリープは年齢を感じさせず、そのダンスや恋愛シーンの説得力はさすがとしか言いようがありません。登場時間は短いながらも、歌唱やダンスで強烈なインパクトを残すニコール・キッドマンも、まさにスターの存在感を放っていました。

☆☆☆

鑑賞日:2020/12/14 NETFLIX

監督ライアン・マーフィー 
脚本ボブ・マーティン 
チャド・ベグリン 
原案ジャック・ヴィアテル 
出演メリル・ストリープ 
ジェームズ・コーデン 
ニコール・キッドマン 
ケリー・ワシントン 
キーガン=マイケル・キー 
アンドリュー・ラネルズ 
アリアナ・デボース 
ジョー・エレン・ペルマン 
ローガン・ライリー・ハッセル 
ソフィア・デラー 
ニコ・グリーサム 
ナサニエル・ジェームズ・ポトヴィン 
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