●こんなお話
イギリスの田舎村で実験で自ら透明人間になった男がどんどん悪さを働いていく話。
●感想
雪の中を歩き続けてとある村にたどり着いた一人の男は、宿屋にチェックインする。女主人が食事を運んで部屋に入ると、全身を包帯で覆い、口元を隠した姿で食事をしている男が「勝手に入るな」と激怒する。やがて部屋には実験道具が広がり、代金を払わないことから追い出されそうになるが、そこで包帯を外すと彼は透明人間だった。村に飛び出した透明人間は、村人を驚かせて混乱に陥れる。
一方、別の場所では博士と助手が消えた仲間について語っていた。博士の娘も失踪した助手を案じて落ち込んでいる。地元警官が応援を要請するが、「透明人間など存在するはずがない」と信じてもらえない。そんな中、助手のもとへ透明人間が現れ、脅迫して車を奪い、宿屋で警察の会議に忍び込み自分の道具を盗み返す。さらに警官たちを殴り倒し、再び混乱を引き起こす。
透明人間は捜査の網を巧みにすり抜け、鉄道事故を仕掛けて死者を出し、銀行から金を盗んではばら撒くなど暴走を加速させる。警察は包囲作戦を展開し、円陣を組んで捕まえようとするが、鼻をつままれたり足を引っ張られたりして突破されてしまう。助手への殺害予告も実行され、警察に守られていた助手は透明人間に襲われ、車ごと崖から突き落とされて命を落とす。
やがて雪の中、裸で逃げ回る透明人間は寒さに耐えきれず納屋に潜むが、寝息で存在に気付かれ警察に通報される。納屋は放火され、雪に残った足跡をたどって銃撃される。病院に運ばれた透明人間は博士の娘に最期の言葉を残し、薬の効果が切れて顔を取り戻したところで息絶える。
透明人間が暴走し、さまざまな悪事を重ねていく過程を特撮で見せる面白さがありました。鉄道事故や銀行強盗などスケールの大きいイタズラから、警察の円陣を鼻をつまんで突破するユーモラスな場面まで、古典らしい工夫に満ちていたと思います。警察の手を繋いで包囲する作戦はシンプルながら妙に楽しく、見ていて微笑ましさすらありました。
また、薬の副作用なのか、それとも本人の素質なのか、次第に凶悪性を増していく主人公の姿は怪奇映画らしい恐ろしさがありました。透明であることの自由さと、そこから生まれる孤独や狂気を短時間で描ききっていて、今見ても新鮮な魅力を持つ作品だと感じます。
☆☆☆
鑑賞日:2022/12/18 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ジェームズ・ホエール |
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脚色 | R・C・シェリフ |
原作 | H・G・ウェルズ |
出演 | クロード・レインズ |
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グロリア・スチュアート | |
ウィリアム・ハリガン | |
ダッドリー・ディグス | |
フォーレスター・ハーヴェイ | |
ユーナ・オコナー | |
ヘンリー・トラヴァース | |
ドナルド・スチュアート | |
マール・トッテナム |