映画【フェイク~我は神なり】感想(ネタバレ):善と偽りが交錯する村で、人間の本性が浮かび上がる

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●こんなお話

 ダム建設で水没する予定の村で宗教を盲目する村人たちとその宗教が詐欺軍団だと娘を奪還しようとする主人公の話。 

●こんなお話

 物語の舞台は静かな村。信仰が根を張ったその土地に、ある男が帰ってくる。彼はかつて村を出た後、多くの罪を背負って生きてきた。今では娘と二人で暮らしているが、周囲との関係は冷え切っており、村人からは腫れ物のように扱われていた。口を開けば怒鳴り、気に食わない相手にはすぐに手が出る。血の通わないような行動に、観ているこちらも距離を取ってしまいたくなるような人物でした。

 そんな彼の前に、一人の牧師が現れる。牧師はやさしい笑顔を浮かべながら村人たちに接し、教会の再建を掲げて信仰を説いていく。けれども、その裏には詐欺のような過去があり、単純な善人とは言えない複雑な人物だった。真実を語るのは誰か、偽りを信じるのは誰か。この村には、簡単には善悪が見えない人間たちが息づいていた。

 物語が進むにつれ、主人公と牧師の対立が深まっていく。かつての過ち、親としての悔い、そして村人たちに向けた怒りと諦め。主人公の激しい行動の裏には、どうにもならない過去と、届かなかった祈りのような感情が渦巻いている。一方で牧師もまた、信じるふりをしてきた自分自身の欺瞞に葛藤していた。

 そんななか、娘との関係も揺れ動いていく。言葉を交わしても分かり合えないまま、互いにすれ違う親子の姿は胸が締めつけられる。物語はやがて、村全体を巻き込んだある出来事へと進んでいき、信仰とは何か、正義とは何か、問われ続けるような時間が続いていく。

 アニメーション作品であることで、現実味の強すぎる描写が少し柔らかくはなっているものの、描いている内容自体は非常に重たく、アニメという形式でなければ観るのがしんどくなる場面も多く含まれていたと感じます。

 特に主人公の粗暴なふるまいには驚かされました。感情移入を拒むようなその態度には、嫌悪すら感じてしまい、彼が物語の中心であることに少し戸惑いも覚えました。しかし、だからこそ彼の持つ苦しみや憎しみが、生々しく伝わってきたのも確かで、非常に印象に残るキャラクターだったとも言えます。

 一方で、やや気になったのはアニメーションの動きの部分でした。韓国制作ならではの質感ということもあるかもしれませんが、キャラクターの動きが少しぎこちなく、観ている最中に引っかかるところも多かったです。物語のシリアスさとのバランスが少し取りづらかったように感じました。

 また、物語の展開上仕方ない部分とはいえ、主人公が警察に助けを求めてもまったく取り合ってもらえない描写が多く、警察の機能不全がやや極端に描かれていた印象も受けました。状況が状況なだけに、もう少しリアリティが欲しかったという思いもあります。

 それでも、真実を抱えた悪人と、偽りを纏った善人という構図は非常に興味深く、観終わった後にも考える余韻が残る物語だったと思います。信仰と嘘、善意と欺瞞、人の弱さと強さ。それらがぶつかり合う中で描かれる人間模様には、確かな力がありました。

☆☆☆

鑑賞日: 2018/03/21 Blu-ray

監督ヨン・サンホ 
脚本ヨン・サンホ
出演(声)ヤン・イクチュン 
クォン・ヘヒョ

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