●こんなお話
傭兵チームが重武装の集団から囚われの女性と子どもを奪還して追いかけっこの話。
●感想
物語は、かつて大きな傷を負い、死の淵をさまよっていた主人公が、治療を終え、ゆっくりと日常を取り戻そうとするところから始まる。体は回復しつつあるが、心の奥底にはまだ戦いの記憶が残っているような表情を浮かべていた。そんな主人公の静かな時間を破るように、新たなミッションの知らせが届く。
指令を送ってきたのは正体のわからない男。その内容は、ある女性と彼女の子どもたちを救出せよ、というものだった。彼女たちは刑務所のような場所に囚われており、そこで“王”のように振る舞う男の支配下に置かれていた。外界とは切り離されたその空間で、彼の命令に従うことを強いられている姿が描かれ、観ていて心が締めつけられるようでした。
主人公は仲間たちと共に救出作戦を開始する。刑務所への潜入。気づかれてしまってからは、囚人たちとの乱戦が始まり、そこに看守まで加わっての混乱は、映像の迫力も相まって非常に見応えのある展開となっていました。さらに場面は変わり、カーチェイスや列車での逃走劇へと続いていく。次第に列車は制御を失い、まるで暴走する鉄の塊のように、線路から外れていく様はスリルに満ちていました。
ドバイの高層マンションへと逃れた一行だったが、そこでもトラブルは待っていた。子どものひとりが誤って敵と通信してしまい、すぐさま追手が差し向けられる。高層ビルの内部から脱出するために、主人公たちは階層を上下し、部屋から部屋へ、そしてついには屋上へ。空を切るようなカメラワークの中で、ヘリコプターによる脱出が描かれ、目を見張るシークエンスでした。
さらに主人公たちは、元妻のもとへ身を寄せる。そこでも新たな展開が待っていて、敵からの直接の連絡が入る。仲間や家族を傷つけることをほのめかすその言葉に、主人公はひとり乗り込み、敵地へと足を踏み入れる。ここからは1対1の対決が描かれていく。子どもを人質にとられ、仲間も銃口を向けられる中、主人公は渾身の力を振り絞って敵とぶつかり合う。
長い戦いの果てに、仲間の一人が命を落としたかに見えた瞬間あったが、実は生きていたという再会の場面が訪れる。そして物語は、新たな任務が始まるような気配を残したまま、エンディング。
作品全体を通してアクションの密度が非常に高く、観ている間はほとんど息をつく暇がないほどでした。刑務所への潜入から始まり、列車での逃走、そして高層ビルでの脱出劇と、次々に舞台が移り変わりながらも、どこかゲームのようなテンポの良さが感じられて、とても楽しい時間でした。
チームとしての主人公と仲間たちの連携も印象的で、それぞれが別の場所で戦う場面でも、どのキャラクターも役割がしっかりしていて、観ていて飽きることがなかったです。特にアクションの組み立て方に工夫があって、手を変え品を変え、観客を楽しませる姿勢が感じられました。
敵キャラクターの描き方も印象深く、重装備の武器を惜しみなく使い、どこでも構わずバズーカをぶっ放してくるその姿は、ある意味で清々しささえありました。防弾仕様の車の存在感も際立っていて、乗り物を使ったアクションの見せ方にも妥協がなく、観ていて気持ちが良かったです。
次の物語の予兆も残しつつ、最後までしっかりと駆け抜けた、一本のアクション作品として非常に楽しませてもらいました。
☆☆☆☆
鑑賞日:2023/06/20 NETFLIX
監督 | サム・ハーグレイヴ |
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脚本 | ジョー・ルッソ |
出演 | クリス・ヘムズワース |
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ティナティン・ダラキシュヴィリ | |
ゴルシフテ・ファラハニ | |
ジャスティン・ハウエル | |
アダム・ベッサ |