映画【日本のいちばん長い日(1967)】感想(ネタバレ):ポツダム宣言をめぐる重臣たちの激論と天皇の決断

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●こんなお話

 ポツダム宣言受諾をめぐって、混乱の日本の話。

詳細ネタバレあらすじ

 1945年7月26日、アメリカ、イギリス、中国がポツダム宣言を発表する。日本政府はこの宣言を受け取るが、すぐには受諾を決定せず、ソ連を通じた和平交渉の可能性も含めて情勢を見守る。日本政府が宣言に対して明確な回答を示さないまま時間が経過し、国内では陸軍を中心に戦争継続を求める意見が続いていた。

 政府はポツダム宣言に対して「黙殺」という方針を示す。その後、広島への原子爆弾投下、ソ連の対日参戦、長崎への原子爆弾投下と続き、日本政府は戦争を終結させるための決断を迫られる。

 1945年8月14日正午。鈴木貫太郎首相をはじめ、東郷茂徳外相、米内光政海相、阿南惟幾陸相ら政府首脳は、ポツダム宣言を受諾するかどうかをめぐって協議する。

 鈴木首相は御前会議を開き、昭和天皇に判断を求める。会議ではポツダム宣言の受諾をめぐって意見が分かれるが、昭和天皇が受諾の意思を示し、日本は終戦へ向けて動き始める。この場面を経て、画面に「日本のいちばん長い日」というタイトルが表示される。

 政府では、昭和天皇が国民に戦争終結を伝えるための詔書を作成する作業が始まる。詔書の文面について関係者が協議を続ける一方、陸軍省では終戦に反対する将校たちが行動を開始する。

 井田正孝中佐、竹下正彦中佐、椎崎二郎中佐、畑中健二少佐らは、ポツダム宣言受諾を阻止するため、陸軍の上級将校たちに協力を求める。畑中らは軍を動かして終戦を阻止する計画を進めるが、陸軍首脳部は天皇の決定に従う立場を取る。

 畑中らは阿南惟幾陸相にも協力を求める。阿南は終戦をめぐる陸軍内部の意見を受け止めながらも、天皇の決定に反して決起することには同意しない。

 畑中らは次に近衛師団を動かすため、近衛師団長の森赳中将に協力を求める。森も決起への協力を認めないため、畑中らは別の方法で近衛師団を動かす計画を進める。

 そのころ宮中では、昭和天皇による玉音放送の録音準備が進められる。昭和天皇が詔書を読み上げ、その声が録音盤に収録される。録音盤は宮中に保管され、翌15日正午にラジオで放送されることになる。

 畑中らは、この録音盤を奪って玉音放送を阻止する計画を立てる。近衛師団を動かして宮城を確保し、録音盤を捜索するための準備が進められる。

 一方、厚木では第三〇二海軍航空隊の小園安名大佐が終戦に反対する動きを続ける。小園の指揮下では、終戦後も戦闘を続けるための行動が取られる。また横浜でも、佐々木武雄大尉らが部隊を率いて行動する。

 畑中らは森師団長のもとを訪れ、改めて決起への協力を求める。しかし森はこれを認めない。畑中らは森を殺害し、森の師団長印を利用して命令書を作成する。

 作成された命令書をもとに近衛歩兵第二連隊の芳賀豊次郎大佐らが部隊を動かし、宮城を占拠する。反乱部隊は宮中の各所を確保し、終戦に関係する人物を拘束する。

 畑中らは宮中にある玉音放送の録音盤を探す。しかし録音盤は見つからない。録音盤を保管している側では、反乱部隊から発見されないようにするための対応が取られている。

 東部軍司令官の田中静壱大将は、畑中らの決起を認めず、反乱部隊に対して撤退を求める。畑中らは東部軍にも協力を求めるが、東部軍は決起に加わらない。その間、阿南陸相は自決する。阿南が自決した後も、終戦に反対する将校たちの行動は続く。

 田中東部軍司令官は近衛師団の部隊に撤退を命じる。芳賀連隊長らは部隊を撤退させ、宮城を占拠していた反乱部隊は宮中から退く。拘束されていた関係者も解放され、玉音放送を阻止するための宮城占拠は終了する。

 しかし、畑中少佐はその後も行動を続ける。畑中は日本放送協会の放送会館へ向かい、放送員の館野守男らに自分たちの主張を放送するよう要求する。しかし、畑中らの主張が放送されることはなく、畑中は放送会館を離れる。

 横浜では佐々木武雄大尉らが鈴木首相の私邸などを襲撃する。鈴木首相はその場を離れていたため、襲撃を受けずに逃れる。首相の私邸は放火され、その後、平沼騏一郎の邸宅も襲撃される。

 厚木でも小園大佐の指揮下で終戦に反対する動きが続く。映画では、各地で終戦を受け入れない軍人たちが行動する場面が、宮城事件と並行して描かれる。

 宮城から撤退した畑中と椎崎は、宮城周辺でビラを配り、決起を呼びかける。その後、二人は自決する。玉音放送の準備はその間も続けられる。宮中に保管されていた録音盤は反乱部隊に発見されず、放送に使用することが可能な状態で残される。

 1945年8月15日正午、昭和天皇の録音した詔書がラジオで放送される。昭和天皇が詔書を読み上げ、日本がポツダム宣言を受諾して戦争を終結することを国民に伝えて、戦争で亡くなった人たちの人数と日本の平和を願っておしまい。

●感想

 連合国側からポツダム宣言が発表され、それを日本政府がどのように受け止めるのかというところから物語が動き始めます。映画は8月14日正午から始まるのではなく、冒頭でポツダム宣言から原爆投下、ソ連参戦など、終戦決定に至るまでの経過を描いてから8月14日に入ります。この構成によって、これから描かれる24時間がどのような状況の中で始まったのかを短時間で理解できるようになっています。

 特に印象に残ったのは、政府首脳による会議と、終戦に反対する若手将校たちの行動を同時進行で描いているところです。会議室ではポツダム宣言の受諾について議論が続き、その一方で陸軍省では畑中少佐らが軍を動かすための計画を進めています。この二つの動きを交互に見せることで、一つの決定をめぐって政府と軍部のさまざまな人物が動いていることがよく分かります。

 冒頭から登場人物が非常に多く、ナレーションと場面転換も頻繁に入ります。そのため最初は情報量の多さに圧倒されますが、物語が8月14日に入ると、鈴木首相、阿南陸相、畑中少佐、森師団長ら、それぞれの立場が整理されていきます。大勢の人物を登場させながら、それぞれの行動を短い場面で積み重ねていく構成は、ドキュメンタリータッチで描かれた本作の大きな特徴だと思います。

 また、映画の中心となるのが玉音放送の録音盤です。昭和天皇の詔書が録音され、それを翌日の正午に放送する準備が進む一方、畑中少佐らは録音盤を確保して放送を阻止しようとします。政府側では放送の準備が進み、反乱側では録音盤を探す動きが進むため、同じ時間の中で二つの目的がぶつかり合います。

 近衛師団長の森赳中将をめぐる場面も強く印象に残りました。畑中らが森に協力を求め、森がそれを認めず、その後に森が殺害され、師団長印を利用した命令書によって部隊が動き出します。政府の決定を軍事力によって覆そうとする計画が、実際の部隊の動きへ変わっていく場面であり、映画の中でも大きな転換点になっています。

 そして後半では、宮城だけでなく、厚木や横浜などでも終戦に反対する動きが描かれます。宮城事件だけに絞らず、複数の場所で起こる出来事を並行して描くため、8月14日から15日にかけての状況を一つの場所だけから見るのではなく、各地で進行していた出来事として捉えられます。

 若手将校を演じる俳優陣の演技も非常に強烈です。特に畑中少佐を演じる黒沢年男は、激しく動きながら計画を進めていく人物を力強く演じています。一方、阿南陸相を演じる三船敏郎、鈴木首相を演じる笠智衆をはじめ、加山雄三、加藤武、山村聰、志村喬など、多数の俳優が登場し、オールキャストによる出演が本作の大きな特徴になっています。

 個人的には、岡本喜八監督の演出によって、非常に多くの人物と出来事を一つの作品にまとめている点が特に面白かったです。1967年の作品ですが、場面転換が速く、会議、軍人たちの移動、宮中での捜索、放送局でのやり取りなどが次々に切り替わっていくため、長尺の作品でも集中して見ることができます。

 また、モノクロ映像で描かれる夏の東京と軍人たちの姿にも強い印象を受けました。大勢の人物が汗をかきながら動き回り、会議室では言葉のやり取りが続き、外では軍用車や兵士が移動する。その二つを交互に見せることで、政治的な決定と軍事的な行動が同じ時間の中で進行していることが伝わってきます。

 何よりも、8月14日正午から翌15日正午までという限られた時間の中に、御前会議、詔書の作成、玉音放送の録音、宮城事件、阿南陸相の自決、畑中少佐らの行動、各地の終戦反対派の動き、そして玉音放送までを詰め込んでいる構成が見事です。単純に「終戦した」という結果を描くのではなく、その決定が実際に放送されるまでに何が起きていたのかを描いているため、終戦直前の日本を知るうえでも非常に興味深い作品でした。

 歴史上すでに結末を知っている出来事を扱いながら、玉音放送の録音盤が見つかるのか、宮城を占拠した部隊がどうなるのか、放送が予定通り行われるのかという一点に焦点を絞ることで、最後まで緊張感が続きます。政府側の会議と軍部の動きを並行させる岡本喜八監督の演出、橋本忍による脚本、そして三船敏郎ら豪華キャストの演技が組み合わさった、日本映画を代表する歴史大作として楽しめる作品でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2011/08/17 DVD 2012/08/25 DVD 2023/07/29 DVD 2026/08/22 DVD

監督岡本喜八 
脚色橋本忍 
原作大宅壮一 
出演宮口精二 
戸浦六宏 
笠智衆 
山村聡 
三船敏郎 
小杉義男 
志村喬 
高橋悦史 
井上孝雄 
中丸忠雄 
黒沢年男 
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