映画【日本のいちばん長い日(1967)】感想(ネタバレ):ポツダム宣言をめぐる重臣たちの激論と天皇の決断

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●こんなお話

 ポツダム宣言受諾をめぐって、混乱の日本の話。

●感想

 連合国側からポツダム宣言の通知が届き、それに対して日本政府内で意見が分かれる場面から物語が動き出します。政府はこの宣言を事実上黙殺する談話を発表しましたが、その対応は海外では無視に近い形で受け止められ、アメリカやイギリスの態度はさらに硬化していきます。やがて広島と長崎に原子爆弾が投下され、ソ連も参戦することで日本は次第に追い詰められていくのです。

 政府の重臣たちは、降伏に向けての意見をまとめきれず、最終的に天皇陛下のご聖断を仰ぐこととなります。陛下が立ち上がる瞬間、その歴史的な決断の重みが強く伝わってきます。このシーンで「日本のいちばん長い日が始まった」というクレジットが現れ、物語はさらに緊張感を増します。冒頭20分の間に数多くの登場人物が交錯し、ナレーションや場面のカットバックも多用されているため、観客は情報量の多さに圧倒されるかもしれません。

 重臣たちの議論では、ポツダム宣言にある「サブジェクト・ツー」の翻訳の解釈を巡って対立が起き、また「戦局必ずしも好転せず」という文言の意味合いでも意見が割れます。その一方で、各地では降伏に納得しない勢力が独自に戦闘を続けようと画策し、若手将校たちは決起を促して上官の説得に当たります。しかし、この若手将校たちは上官の名前を使って「この人も参加する」と虚偽の発言を平然と行う場面があり、その大胆さに驚かされます。さらに近衛師団長の殺害にまで発展するという事態も描かれ、緊迫感が高まります。

 そして、天皇陛下の声が収録された玉音盤をめぐる攻防戦がクライマックスとなります。決起が失敗に終わったことで日本の未来はどうなるのか、出演するすべての人物が新しい日本の行く末を思いながらそれぞれの行動を起こしている姿に、深い感動を覚えました。横浜の軍人が学生たちを率いて総理暗殺を企てる動きも描かれ、物語にさらなる緊迫感をもたらしています。

 若手将校たちの演技が熱すぎるためにやや圧倒される場面もありましたが、全体としては圧倒的な迫力とエネルギーに満ちた名演が画面いっぱいに広がり、この1日に凝縮された緊張感がまざまざと伝わってくる最高の映画に仕上がっていると感じました。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2011/08/17 DVD 2012/08/25 DVD 2023/07/29 DVD

監督岡本喜八 
脚色橋本忍 
原作大宅壮一 
出演宮口精二 
戸浦六宏 
笠智衆 
山村聡 
三船敏郎 
小杉義男 
志村喬 
高橋悦史 
井上孝雄 
中丸忠雄 
黒沢年男 
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