●こんなお話
人類とAIが戦争している世界で奥さんを探すために兵器のAIと逃避行する話。
●感想
AIがロサンゼルスを攻撃し、100万人が死亡。これをきっかけに西側諸国はAIを殲滅する政策を取り、アジア諸国は逆にAI技術と共存の道を選ぶという、世界が二分された未来の物語。西側とアジアは事実上の戦争状態に突入し、AIを巡る価値観の衝突が続いている。
そんな世界で、主人公は妊娠中の妻と穏やかな生活を送っていた。しかし、味方のAIたちが人間の軍人を捕まえてくると、主人公が実は潜入捜査官であることが発覚。捕虜を逃がそうとしたことで正体が妻にバレてしまい、彼女はショックを受けてAI側へ逃走。その直後、爆撃があり悲劇が起きる。
数年後、AI側の“クリエイター”が開発したという新型兵器を破壊する任務で主人公が再び戦場に赴く。しかし、その兵器とはAIの子どもだった。任務の中で部隊とはぐれた主人公は、この子ども型AIとともに行動を始め、破壊するどころか守ろうとするようになる。さらに、生きているという妻の情報を得て、彼女に会うための旅も始まる。
軍もAIも両方から追われながら、旧知の仲間に助けを求めたり、AI反乱軍に捕まって脱出したり、敵地で子どもAIを奪還するために危険な行動に出たりと、展開は続く。
やがてたどり着いたのはチベットのような山奥。そこには妻がいたが、彼女の姿は複雑な事情を抱えていた。そこへ再び軍隊が現れ、主人公はAIを確保した英雄として持ち上げられる。子どもAIの処分を命じられるが、実は…という展開が待ち受けており、最終的には軍のミサイル基地への突入と爆破ミッションというクライマックスへ突入していく。
映像や世界観は魅力的で、都市のネオンやデザインなど視覚的な楽しさがあって、AIが自然に人間社会の中を歩き回る描写は圧巻でした。アメリカ映画でありながら、アメリカ側が「悪」、アジア側が「善」と描かれる点も新鮮。
ただ、ストーリーはやや退屈で、130分の上映時間が長く感じてしまいました。冒頭からうっかりミスで奥さんに正体がバレる展開や、主人公の行動原理が一貫して「奥さん大好き」であることも、やや説得力に欠けると感じたり。軍人としての彼の気持ちや葛藤も描かれず、人物像が曖昧なままだったのも残念でした。
AI側の反乱軍も抜けが多く、主人公を簡単に逃がしたり、基地があっさり制圧されたりと、ご都合主義的な場面も目立ちます。また、西側がAIを拒否しているのに、最先端のAI兵器を保有しているという設定もやや矛盾を感じました。
最終盤では、主人公が軍に英雄扱いされ、敵地に簡単に侵入して混乱させるなど、盛り上がりに欠ける演出が続き、物語の山場が弱かった印象です。ラスボス的な存在もクライマックス前に退場してしまうため、決着がふわっと終わってしまった感じです。見せ場がいっぱいなのに退屈に感じるのはなぜなんだろう? と考えてしまいました。
映像体験としては優れているが、物語の構成や人物の描き方には粗さが目立つ一本でした。
☆☆☆
鑑賞日:2023/10/22 イオンシネマ座間 2025/07/03 Amazonプライム・ビデオ
監督 | ギャレス・エドワーズ |
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脚本 | ギャレス・エドワーズ |
クリス・ワイツ | |
原案 | ギャレス・エドワーズ |
出演 | ジョン・デヴィッド・ワシントン |
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渡辺謙 | |
ジェンマ・チャン | |
アリソン・ジャネイ | |
マデリン・ユナ・ヴォイルズ |