映画【ブラック・フォン】感想(ネタバレ):黒電話と予知夢が導く兄妹の脱出劇

THE BLACK PHONE
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●こんなお話

 子どもを誘拐する人間に拉致された主人公の脱出するのと彼を助けたい妹さんの話。

●感想

 少年野球の試合から始まる物語。主人公はマウンドに立ち、相手打者を追い詰めていく。しかし、渾身の投球は打ち返されてしまう。そんな相手の少年とはその後、意外にも友達のような関係になるが、ある日、彼がひとりで帰る道すがら黒いバンが近づき、忽然と姿を消してしまう。地域では子どもの行方不明事件としてニュースになるが、残された者たちには何が起きているのか見当がつかない。

 主人公は妹と、酒に溺れ暴力的な父親と暮らしている。母親はすでにいない。学校では、妹と一緒に登校中に同級生のケンカに遭遇したり、自分もいじめの標的になりかけるが、あるクラスメートが助けてくれる。その彼もまた、黒いバンに近づかれ行方不明となってしまう。

 やがて、主人公自身もそのバンにさらわれてしまい、見知らぬ場所で目を覚ます。そこは地下室。マスク姿の男がそこにいて、主人公は何の説明もなく監禁される。部屋には黒い電話があるが、電話線は繋がっていない。しかしある時、その電話が鳴り始め、出てみると既に殺された子どもたちからの声が聞こえてくる。彼らは、逃げるためのヒントを少しずつ伝えてくれる。

 一方、妹は夢を見る。それはまるで未来を見ているかのような内容で、失踪した子どもたちや犯人に関わる詳細な映像が浮かんでくる。彼女はその夢で得た情報を警察に伝え、最初は半信半疑だった捜査陣も、やがてその言葉に耳を傾け始める。

 警察が聞き込みをして訪れたある家には、事件や犯罪に異様な興味を示す男が住んでいた。彼の態度に違和感を覚えながらも、警察は家を後にする。しかし実は、その家の地下室こそが主人公が監禁されていた場所だった。

 妹は夢の中で、ある不良少年が警察に連れていかれる場面を見て、そこから犯人の家の場所を突き止める。そして自転車であちこち探し回り、ついに目当ての家を見つけて警察に通報する。主人公も一度は脱出に成功するが、再び捕らえられてしまい、今度こそ殺されるという瀬戸際に追い詰められる。

 その頃、事件に異様な執着を見せていた男が、自らの推理により「もしかして自分の家の地下なのではないか」と気づく。そして地下室へ向かい、そこで監禁されていた主人公を発見する。だが安堵も束の間、背後から犯人に襲われ命を落とす。

 警察は妹からの連絡を受けてその家に踏み込む。地下室からは、これまでに行方不明となっていた子どもたちの遺体が発見される。しかし主人公は別の場所に連れて行かれていた。犯人との格闘の末、主人公は渾身の力で首を絞め、ついに決着をつける。外に出ると、向かいの家には妹と警察が待っていた。実は主人公が監禁されていたのは、遺体を埋めていた地下とは別の場所だったことがわかる。

 兄妹には、母親から受け継いだ不思議な能力があった。それは、母が生きていたころから存在していたもので、母の自死以降、父はアルコールに溺れるようになったという背景も語られる。けれど父親についての描写はあまり掘り下げられず、観ていてやや物足りなさを感じる部分でもありました。

 また、妹の予知夢の演出もあまり効果的に感じられず、単なる展開のための装置にとどまっていた印象が残りました。犯人が子どもを閉じ込めるたびに登場する黒い風船も、意味深なようでいて、最後まで印象づけには至らなかったように思います。弟の“犯罪マニア”という設定も、もっとストーリーに絡められたら深みが出たかもしれません。

 とはいえ、1970年代のアメリカ郊外の描写には独特の空気感がありました。色彩のトーンや衣装、小道具なども含めて、当時の雰囲気を丁寧に作っていたように感じます。そして何より、主人公の兄妹を演じた役者さんたちがとても魅力的で、その存在がこの作品を最後まで引っ張っていたように思いました。長いようで短い100分間、ジャンル映画として楽しめる1本だったと感じます。

☆☆☆

鑑賞日:2023/03/07 Amazonプライム・ビデオ

監督スコット・デリクソン 
脚本スコット・デリクソン 
C・ロバート・カーギル 
原作ジョー・ヒル
出演イーサン・ホーク 
メイソン・テムズ 
マデリーン・マックグロウ 
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