映画【白ゆき姫殺人事件】感想(ネタバレ):真実はどこに?SNS社会の闇を描く群像劇的サスペンス映画

shirayuki
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●こんなお話

 長野の山中でめった刺しにされた上に焼死体で発見される事件が起きて、テレビ局のディレクターが容疑者として浮かび上がった女性を追いかけはじめて、その女性を犯人だと確信してTwitterで動向をつぶやいていくと、それがどんどんと広がっていって……な話。

●感想

 「わからねえ、さっぱりわからねえ」──そんな混乱から始まるような映画で、まさに【羅生門】のように、ひとつの事件を複数の視点から描いていく構成が印象的でした。視点が変わるたびに話の印象が変わっていく中で、ネットの中では虚実が入り混じり、やがて根拠のない話があたかも事実のように広まっていく怖さが描かれていて、とても興味深かったです。

 ネット依存や誤った使い方がもたらす歪みをテーマにした映画として面白かったですし、情報量は多いものの展開自体は整理されていて、わかりにくさがなかったのも好印象。めった刺しの描写など、暴力的なシーンにはかなりの迫力があって、痛々しくも恐怖を感じる作りになっていたと思います。

 ただ、物語の展開がずっと、被害者と同じ職場だった元カノのつながりから、関係者に順番にインタビューしていく流れが続く構成で、途中でやや単調にも感じられました。そのため中盤からは主人公の小学生時代までさかのぼる回想が入り、呪いやいじめなどの要素も絡んでくる。ただ、いじめを放置する先生の描写などは、あのままでよかったのかと疑問に感じた部分もあったり。

 事件の真相も、行き当たりばったりな犯行に見えてしまって、雑な印象が否めなかったです。ネットやワイドショーに関する描写も、わかりやすさを優先していたせいか、やや説明的で浅く感じました。しかも「ネットが暴走する怖さ」自体も、もはや目新しくはないため、テーマとして若干古びた印象も。

 ただ、菜々緒さんのいじめっ子ぶりは圧巻で、まるで地でいっているようなリアルさがあって見事な芝居だでした。一方で、井上真央さんが「地味で目立たない女性」として描かれる演出は、彼女も十分美人なのでやや説得力に欠けてしまっていたのは仕方ないのかもしれないです。

 最後に主人公が語る「真相」のような話も、あくまで彼の視点に過ぎず、しかもその語りのあとに笑顔で終わることからも、本当に真実だったのかどうか曖昧なままにされている。それが逆に余韻となって、「藪の中」的な面白さを感じさせるラストになっていました。 

 ロウソクを灯してずっと主人公の帰りを待っていた親友の存在など、細部に気になる部分がいくつも残る映画でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2014/04/05 TOHOシネマズ南大沢

監督中村義洋 
脚本林民夫 
原作湊かなえ 
出演井上真央 
綾野剛 
菜々緒 
金子ノブアキ 
小野恵令奈 
谷村美月 
染谷将太 
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