●こんなお話
またジグソウのゲームに翻弄される人たちの話。
●感想
冒頭から目を惹く演出で、観客の緊張を一気に引き寄せる作品でした。顔に奇妙な装置をつけられ、逃げる間もなく罠にかかる男の姿がアバンタイトルとして描かれ、強烈なツカミとなっています。シリーズらしいグロテスクさと理不尽さが濃縮された数分間で、一瞬で物語世界に引き込まれました。
今回は、なんとジグソウ本人が警察に捕まるところから物語が始まります。その異常な静けさと不気味な余裕が漂う逮捕劇の中、監視カメラに映っていたのは複数の男女たちの姿。その中に主人公の息子の姿があったことから、事態は緊迫したものへと一気に進展していきます。主人公である刑事は、息子の安否を気にかけながら、ジグソウに居場所を問い詰めようとしますが、返ってきたのは「息子を助けたければ、まず最後まで話を聞こう」という、どこか皮肉めいた言葉。
ここからは、ジグソウと刑事との対話を軸に進行する現在の尋問パートと、監視カメラに映る人物たちが仕掛けられたゲームを進んでいく屋敷内のパートという、二重構造の語りが展開されていきます。タイムラインを交差させながら、それぞれの空間で緊張が少しずつ高まり、後半へ向けて巧みに重なっていく構成です。
閉じ込められた男女たちは、ジグソウによって巧妙に仕掛けられた数々の罠に晒されながら、脱出を試みます。しかし、今回のゲームについては、正直あまり見応えがあるとは感じませんでした。罠にかかった人物があっという間に命を落としていく展開は過去作と似た構造であり、仕掛けの意外性も控えめな印象が残ります。ある意味では、このシリーズらしい楽しみ方——“どんな最期を迎えるのか”を見守るスタイルとも言えますが、それにしても処刑方法が少し予想の範囲内で、意外性や創意の面ではやや物足りなさを覚えました。
また、閉じ込められたメンバーたちは、それぞれの素性が分からないまま疑い合い、衝突を繰り返していきます。このあたりの描写は、人間ドラマというよりも衝突の連続という印象が強く、観ていてやや消耗するところもあります。個人的には、信頼し合っていた人々が試練によって裏切りや選択を迫られていくような、心の揺れ動きが見える展開の方が、より感情を揺さぶられると感じます。
一方、尋問室でのジグソウと刑事のやり取りについては、非常に引き込まれました。淡々とした口調で語るジグソウのセリフの一つ一つに、何かの伏線があるように感じられ、聞き逃せない緊張感が続きます。画面の中で表情もほとんど変えずに語り続ける姿からは、知性と狂気のバランスがにじみ出ており、説得力がありました。
そしてクライマックスでは、ジグソウが一貫して語っていた“話を最後まで聞くことの重要性”が、皮肉と共に回収されていきます。その瞬間、思わず「あっ」と声が出そうになるような驚きがあり、ここまでの全体構造が一気に意味を持つ形で収束していくのは見事でした。終盤の展開はまさにしてやられたという感覚があり、続編としての期待にもきちんと応えてくれていたと思います。
登場人物たちの背景に深く立ち入らずとも、全体を覆う不穏な空気と、鋭く構成されたサスペンスの演出、そして何よりジグソウというキャラクターの存在感に支えられた、密度のある作品体験となりました。
☆☆☆
鑑賞日:2012/07/02 DVD 2022/09/19 U-NEXT
監督 | ダーレン・リン・バウズマン |
---|---|
脚本 | ダーレン・リン・バウズマン |
リー・ワネル |
出演 | ドニー・ウォルバーグ |
---|---|
ショウニー・スミス | |
トビン・ベル | |
フランキー・ジー | |
グレン・プラマー | |
ダイナ・メイヤー |