●こんなお話
猿飛佐助をはじめとする真田十勇士が大阪の陣で大暴れする話。
●感想
真田十勇士という有名な講談を、リアルさよりもケレン味たっぷりの娯楽活劇として描いたこの映画。大阪の陣を舞台に、特に真田丸での戦いを迫力ある合戦シーンで見せてくれたのは大きな見どころでした。特に冬の陣での局地戦で一人ひとりが戦う姿は、映像的にもアクション的にも楽しめました。
冒頭から「これは何が始まるんだ?」と面食らうような演出でスタートし、そこから十勇士が次々に登場。カメラ目線で名乗りと決めポーズをバシッとキメる展開は、まさに娯楽時代劇の醍醐味。派手な導入で一気にテンションが上がる構成はとてもよかったです。
ただ、十人の勇士たちをたった2時間でまんべんなく描くのは難しいことは承知してますが、それにしても一人ひとりのエピソードがあまりにも薄いと思いました。「猿飛佐助が“楽しそうだから”という理由で真田幸村に仕える」「霧隠才蔵に想いを寄せるくの一が追いかける」「幸村と淀殿の恋模様」「弱い甚八の葛藤」「内部に裏切り者がいる」など、どれも設定だけが用意されていて、深掘りされることなく消化不良に終わってしまった印象が強いです。
そのため、後半でキャラクターたちが次々に命を落としていく展開になっても、「えっと、あなた誰だったっけ?」という気持ちが先に来てしまって、感情移入しづらかったです。盛り上がるはずのシーンで口から血を吐き、感動的なBGMが流れる中で最後の言葉を叫びながら退場していくのに、まわりの戦いがピタッと止まる演出もどこか浮いて感じてしまったり。
また、知略を駆使して大軍を翻弄するような戦術的魅力も薄く、ただ勢いで突っ込むだけの展開が続くのも残念でした。最終決戦では、淀殿と秀頼を巡る倉庫のような空間でのやりとりが展開されるが、敵を出し抜いた痛快さもなく、「どうしてこうなった?」と疑問だけが残るまま終わってしまうものでした。
さらに気になったのは、火縄銃が土砂降りの中でバンバン撃てることや、現代口調のセリフが時代劇の世界観を壊していることだったり。特に中村勘九郎さん演じる主人公のキャラクターは、まるで舞台の芝居をそのままスクリーンに持ち込んだようで、映画というより舞台の映像記録を観ているかのようでした。時代劇としての没入感に欠け、物語への感情移入を妨げる要因になっていたと思います。
ケレン味たっぷりの演出や、派手なビジュアル、アクションを楽しむには悪くないと思いますが、キャラクターやストーリーの深みを期待すると、物足りなさが残る一作でした。
☆☆
鑑賞日: 2016/09/22 TOHOシネマズ川崎
監督 | 堤幸彦 |
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脚本 | マキノノゾミ |
鈴木哲也 |
出演 | 中村勘九郎 |
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松坂桃李 | |
大島優子 | |
永山絢斗 | |
石垣佑磨 | |
伊武雅刀 | |
佐藤二朗 | |
加藤雅也 | |
大竹しのぶ | |
松平健 |
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