●こんなお話
富山市議会が不正請求して税金をじゃんじゃん使っていたのを明らかにしていくドキュメンタリー。
●感想
物語の発端は、富山市議会で議員報酬を月額10万円アップしようという動きから始まります。市議会の“ドン”が「年金だけじゃ生活が成り立たない」と主張し、その流れが一気に現実味を帯びてくる。が、その裏で不正疑惑が次々と明るみに出ていく。
政務活動費の使い方に疑問を持った地元メディアが徹底取材を始める。中でも、印刷代や会議費の異常な請求額が問題となり、記者が議員本人に直撃取材。本人は当初否定しつつも、しばらくして謝罪。さらに別の議員にも同様の疑惑が浮上し、また追及。そしてまた謝罪、という同じパターンが繰り返される。
ついには辞職ドミノが起き、選挙が行われて次々と新しい議員が誕生するものの、議会の空気はむしろ緊張感を失っていく。取材陣は粘り強く追及を続けるが、記者が異動したり、担当を外れたりしても、その姿勢は引き継がれていく。そして今日もまた、誰かが真実を求めて議事録を追い、現場に立って取材している。そんな形で映画は静かにおしまい。
登場する議員たちは、まるで次々と“悪役”が登場しては謝罪するコントのようで、あまりに見事な謝罪ループには笑ってしまうほどです。いったい何回、おじさんやおじいさんが頭を下げる姿を見せられるのかという。しかも、新しく当選した若手議員にもスキャンダルが浮上。議長に食ってかかっていたかと思えば、議会では質問もおぼつかず、さらに女性の部屋に無断で入ったという問題まで発覚。それでも辞職せず「頑張る」と語る姿に、もはや笑うしかないような滑稽さがあったり。
また、市長も頻繁に登場するが、「制度的にコメントできない」「行間を読んでください」と繰り返すだけで、何をしているのか、何を考えているのかが一向に伝わってこず。この映画だけを見れば、この市長の功績とは?と疑問すら湧いてくるものでした。
不正、謝罪、再出発、また不正という、ある意味で“無限ループ”のような市政のドキュメント。だけど、不思議と暗さや重苦しさよりも、笑いと皮肉と驚きに満ちていて、最後まで飽きずに楽しめる一本でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2023/08/17 Amazonプライム・ビデオ
監督 | 五百旗頭幸男 |
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砂沢智史 |
出演(声) | 佐久田脩 |
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ナレーション | 山根基世 |