●こんなお話
銀行強盗で盗んだお金をヤクザの主人公がぬすんで、ホテルの娘さんと知り合って、マンガから飛び出たみたいなヤクザさんたちから逃避行する話。
●感想
ヤクザに追われる男女の逃避行という、ある意味では王道のプロットを軸にしながらも、その周囲を取り巻く登場人物たちのキャラクター造形がとにかく濃くて強烈で、ストーリーそのものよりもキャラクターの印象が記憶に残るタイプの映画でした。
ホテルで働くトシコは、叔父ソネザキによる過剰な干渉と支配に長年耐えてきたが、ある朝ついに限界を迎え、何の連絡も残さず職場を飛び出す。
車で山道を走る途中、彼女は森の中をパンツ一丁で逃走する男と衝突する事故を起こし、その衝撃で意識を失う。
その男は鮫肌黒男と名乗り、暴力団組織の資金を横領して逃げている最中だった。鮫肌は気絶したトシコを後部座席に乗せ、彼女の車を使ってその場を離れ、意図せず二人は同じ逃避行に巻き込まれていく。
鮫肌を追っているのは、横領された金を取り戻そうとする暴力団幹部・田抜とその配下、異様な風体の殺し屋たちであり、さらにトシコを連れ戻そうとする叔父ソネザキが雇った殺し屋・山田も追跡に加わる。
追手はそれぞれ独自の方法と執念で二人を追い詰め、物語は複数の人物が入り乱れる追跡劇として進行する。
逃走を続ける中で、鮫肌とトシコは公衆トイレ、山中などを転々としながら、次第に互いの存在を意識し始める。
やがてトシコは、二年前に起きた銀行強盗事件で銃弾を受けた男を助けようとした記憶を思い出し、その男が鮫肌だったことを知る。
鮫肌もまた、その時の出来事を心に残しており、二人は過去ですでに交差していたことが明らかになる。
しかしトシコは山田に捕らえられ、再びホテルへ連れ戻されてしまう。鮫肌は彼女を救うためホテルに向かうが、田抜一味に捕まり激しい拷問を受ける。
その様子を目撃した山田は、かつて鮫肌から向けられたささやかな優しさを思い出し、突如として行動を翻し、ヤクザたちと銃撃戦を繰り広げる。
混乱の隙を突いて鮫肌は脱出し、物語は山中での最終的な銃撃戦へとなだれ込む。トシコもまた自ら武器を手に取り、追手のヤクザたちに立ち向かう。
激しい銃声の末、追跡者たちは排除され、逃亡劇は終息へと向かう。
すべてが終わった後、物語は再び銀行強盗事件の場面に戻り、鮫肌とトシコが偶然ではなく、すでにその時点で出会っていたことが明確に示されておしまい。
ヤクザに追われる男女の逃避行という王道の設定をベースにしながらも、本作はストーリー以上に登場人物のキャラクター造形が強烈で、観終わった後には物語よりも人物の印象が鮮明に残る作品でした。
岸部一徳さん演じるナイフ使いでホーロー看板を収集する男の異様な存在感や、嗅覚で追跡する鶴見辰吾さんの執念深さ、さらに我修院達也さんの殺し屋としての過剰なテンションなど、登場するたびに画面の空気が一変します。
下っ端ヤクザたちの意味不明な衣装や振る舞いも含め、理屈よりも視覚的なインパクトで押し切る作風が徹底されていました。
一方で、物語構成についてはやや冗長に感じる部分もあり、場面転換の合間に挿入される会話が長く、テンポを削いでいる印象も受けました。
主人公とヒロインの関係性についても、過去の銀行強盗事件という接点は用意されているものの、命を懸けるほどの動機としては弱く感じられ、感情移入に時間がかかったのも正直なところです。
また、寺島進さん演じる兄貴分の行動原理が夢の中の啓示によるものだと語られる場面には、説明不足を感じ、戸惑いもありました。
このあたりが整理されていれば、物語としての納得感はさらに高まったのではないかと思います。
それでも、編集のリズムや省略を効かせた演出、銃撃戦の迫力など、画面そのものの勢いは最後まで衰えず、キャラクターが動いているだけで楽しい瞬間が多くありました。
100分という尺をやや長く感じる部分はありましたが、キャラクターとテンションの高さで押し切る一本として、他にはない特異な魅力を持った作品だったと感じています。
☆☆☆
鑑賞日:2014/03/17 DVD 2026/02/11 U-NEXT
| 監督 | 石井克人 |
|---|---|
| 脚色 | 石井克人 |
| 原作 | 望月峯太郎 |
| 出演 | 浅野忠信 |
|---|---|
| 小日向しえ | |
| 岸部一徳 | |
| 寺島進 | |
| 真行寺君枝 | |
| 鶴見辰吾 | |
| 島田洋八 | |
| 我修院達也 |

