●こんなお話
スーパーマーケットにテロリストがやってきたので、元海兵隊の児童保護の主人公が戦う話。
●感想
冒頭からどこかの戦地で襲撃を受け、混乱の中で敵と応戦する兵士たちの姿を描いたシーンで始まります。主人公もその現場におり、銃声と爆発音の飛び交う戦闘のさなかにいますが、やがてそれが悪夢であることが明らかになります。そして、彼は目を覚まします。
目覚めた主人公がリビングでテレビをつけると、娘が視聴していたのは政治家である継父が、自身の経営するスーパーマーケットの前で演説している様子。すぐにテレビを消す姿からは、主人公とその義父との関係が良好でない様子。
主人公は現在、児童保護関連の仕事に就いており、虐待を受けている子どもを保護する任務に従事しています。ある日、保護した子どもと共に「朝食を食べよう」と提案し、彼らは件のスーパーマーケットへ向かいます。朝食にダイナーではなくスーパーを選ぶという点に、アメリカならではの食文化がうかがえ、食材購入か店内飲食かなど興味をそそられる描写でした。
しかし、そのスーパーに到着した直後、武装集団が突入し、突如として施設全体が人質立てこもり事件の現場と化します。そこから、主人公が単身で武装集団と対峙する、閉鎖空間でのサバイバルアクションの様相を呈していきます。
とはいえ、アクション映画としては予算の限界が影響しているのか、戦闘シーンの迫力に欠け、演出もやや散漫な印象を受けました。カメラワークや編集に工夫が少なく、「今どこで誰がどうなっているのか」が視聴者に伝わりづらい場面が多く、緊張感に乏しい展開となっていました。
敵側の人数も4人程度と限られており、登場人物たちは比較的簡単に行き来できてしまうなど、立てこもりの緊迫感が弱くなっている点は惜しいところでした。主人公の娘を逃した後、自らは人質グループからすっと離れたり、スペイン系の子どもが自由に出入りしたりと、セキュリティの緩さが描写の説得力を欠いてしまっています。
物語の構造上、テロリストたちは政治的信条に基づいた正義を主張しているように見せかけますが、実際には金品を目的としていたという展開があり、表面的にはひねりがあるようでいて、それ以上の掘り下げがなされておらず、テーマ性にはやや物足りなさが残ります。
中盤から終盤にかけて、登場人物たちの関係が次々と明らかになっていく構成には意外性がありますが、それぞれの繋がりが急に提示されるため、やや唐突な印象を受けるのも否めません。
ただし、主人公が万能なヒーローとして描かれるのではなく、幾度となく追い詰められ、ピンチに陥る展開が続く点は新鮮でした。逆に脇役の女性や子どもたちがテロリストを倒していくという構図は、予想を裏切る展開で興味深く感じました。テロリストたちもまた、不死身のようにしぶとく立ち上がる様がシュールで印象的でした。
政治家役のジョン・マルコビッチのキャラクターも、悪人なのか善人なのかが最後まで曖昧で、観る側の感情を揺さぶるのに一役買っています。また、テロリスト側に協力すると思われた広報担当の女性が、意外にもその後は何事もなく物語に溶け込んでいくなど、一筋縄ではいかないキャラクターの配置が印象に残ります。
最終的に、大金を得る万引きキャラや、脚を折られ、火だるまになりながらも最後まで立ち向かう裏切り者の従業員の姿が妙に応援したくなるなど、本作は突き詰めれば“何でもアリ”のB級的魅力に満ちたアクションスリラーとして捉えると、楽しみ方が見えてくるかもしれません。
☆☆
鑑賞日:2022/01/24 ヒューマントラストシネマ渋谷
監督 | ジョン・キーズ |
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脚本 | ミッキー・ソリス |
出演 | タイリース・ギブソン |
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ジョン・マルコヴィッチ | |
クリストファー・バッカス | |
マイケル・ジェイ・ホワイト | |
ルナ・ローレン・ベレス |