映画【極道黒社会 RAINY DOG】感想(ネタバレ):台北の雨と裏切りの逃避行──哀川翔主演の静かなバイオレンスドラマ

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●こんなお話

 台湾で殺し屋をしている主人公が昔関係を持った女性から「あんたの子」と男の子を押し付けられ、疑似親子しながら組織に裏切られての逃避行の話。

●感想

 台北で殺し屋として生きる主人公は、親分の指示通りに淡々と仕事をこなし、ターゲットを射殺する冷徹な男。そんな彼のもとに、かつて関係を持った女性が子どもを連れて突然現れ、「あなたの子ども」と言い残して去っていく。主人公は子どもに構うこともせず、無視して普段通りの殺しの仕事を続けるが、無言のままついてくる少年との奇妙な生活が始まっていく。

 次のターゲットは、女性にひどいことをした男。命令に従い電車で地方へ向かい、暗殺を試みるが、雨が降り始めたことで一時中止。その地で偶然入った売春宿で、「雨の街から出たい」と願う売春婦と心を通わせていく。一方、少年は外でゴミをあさって食事をしながら、静かにその生活に馴染んでいく。

 晴れの日、ついにターゲットを暗殺。だが殺された男の弟がファミリーの後を継ぎ、主人公への報復を開始する。主人公は暗殺現場で手に入れた大金を持って、売春婦とともに逃亡を図る。だが駅でヤクザたちに待ち伏せされ、襲われた2人はタクシーで海へ逃走。頼みの綱である親分に連絡を取るが、親分は裏切ってヤクザたちに主人公の情報を漏らしていた。 

 裏切りに気づいた主人公は、砂浜に埋められていた原チャリで逃走。売春婦の知人を頼って身を寄せるが、そこでも懸賞金の誘惑に屈した裏切りが待っていた。逃げようとする中で売春婦は殺され、主人公も少年を人質に取られピンチに陥る。

 しかし、これまで一言も発さなかった少年が突然叫び、その声に驚いた敵のスキをついて主人公が反撃。壮絶な銃撃戦の末にカタキを倒し、少年と抱き合うが、そこへ現れた日本人の知り合いが主人公に銃弾を浴びせる。撃たれたヤクザの男は生き残り、少年に「大きくなったら俺を殺しに来い」と言い残して去っていく。すべてが終わったかのように見えたが、静かに復讐の火種だけが残るラスト。

 雑多で湿度の高い台湾の空気感がじっとりと伝わってくる映像と、哀川翔の抑えた芝居が相まって、全体的に静のトーンで貫かれた作品。晴れの日しか動かないというジンクスを守る姿や、拳銃を一瞬で抜き取り迷いなく撃つその動きは、静かでありながら圧倒的な存在感がありました。

 少年と女性との疑似家族のような時間も描かれるが、やはり裏切りがつきまとう世界。復讐に燃える敵側の描写も同時進行で進み、弾丸が飛び交うクライマックスでは、まるでバイオレンスが舞踊のように描かれていたのが印象的です。撃ち合いのテンションが高すぎて、時に笑ってしまうほどの誇張表現もあり、それもまた独特の味となっていました。

 全体的に“待ち”の時間が長く、動きが少ないため退屈に感じる部分もあるけれど、そこが逆に雰囲気づくりに一役買っていたのも事実で。そして、田口トモロヲが演じる殺し屋の不気味な存在感も忘れられないです。余韻が長く残る、静かながらも力強いバイオレンスドラマでした。

☆☆☆

鑑賞日:2014/10/25 DVD 2024/02/18 WOWOW

監督三池崇史 
脚本井上誠吾 
出演哀川翔 
高明駿 
田口トモロヲ 
陳仙梅 
何建賢 
李立群 
程守一 
チャン・シー 
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