●こんなお話
世界一周レースをする飛行機たちの話。
●感想
物語の主人公は、小型の農薬散布機ダスティ。毎日トウモロコシ畑の上を飛び、ひたすら農薬を撒く仕事をしているだけの彼だったが、胸の奥には「スピードレースに出場したい」という夢を抱いていた。しかし周囲の飛行機たちからは「小さな機体では無理だ」と笑われ、唯一の理解者は親友の給油トラック・チャグだけだった。けれどもダスティは諦めきれず、大会の予選に挑戦する。最初は操作もぎこちなく、スピードも足りず惨敗続き。それでも希望を捨てない彼は、空母に暮らす元海軍機スキッパーに師事を願い出る。頑固で口の重いスキッパーは相手にしなかったが、次第にダスティの情熱に折れ、訓練が始まる。旋回や高高度飛行といった技術を少しずつ習得していく。
やがて世界一周レースに挑戦することとなったダスティは、インドのイシャーニ、メキシコのエル・チュパカブラといった個性的なライバルたちと出会う。友情や絆、そして競争心を育む一方、最大の強敵は王者リップスリンガー。彼は勝つためなら手段を選ばない狡猾な存在だった。嵐や山岳地帯の飛行といった困難の中で、ダスティはたびたび墜落しかける。さらに致命的な弱点として「高所恐怖症」であることも判明し、レースを投げ出しそうになる。しかし仲間の励まし、そしてスキッパーの隠された過去──戦争でのトラウマ──が明かされることで、ダスティは再び立ち上がる。クライマックスではリップスリンガーの妨害を受けながらも仲間の助けを得て、ゴール目前で見事な逆転を果たす。小さな農薬散布機が夢を叶える姿に観客の喝采が響き、物語はハッピーエンド。
王道の成長譚として安心して観られる作りでした。世界一周レースに出場し、多彩な仲間やライバルと関わる展開は親しみやすく、アニメーションで描かれる空の風景も美しく迫力がありました。けれども主人公が抱える高所恐怖症や、師匠スキッパーの戦争の記憶といった設定はこれまで何度も語られてきた類型的なもので、展開の意外性は少なかったと感じます。
中盤から後半にかけては苦境に次ぐ苦境が続き、物語が停滞する印象もありました。観客としては「どうせ困難を越えて再び飛び立つ」とわかっているため、次の段階に早く進んでほしいと感じてしまう部分もあったり。
ただ、農薬散布機という本来レースには不向きな機体が夢に挑み、仲間に支えられながら力を尽くす姿は見やすく心地よいものでした。子どもから大人まで楽しめる普遍的な物語に仕上がっており、映像のクオリティやキャラクターの魅力も含めて安心して楽しめる作品だったと思いました。
☆☆
鑑賞日: 2013/12/21 TOHOシネマズ南大沢 2025/08/26 Disney+
監督 | クレイ・ホール |
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脚本 | ジェフリー・M・ハワード |
出演(声) | デイン・クック |
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ステイシー・キーチ | |
ブラッド・ギャレット | |
テリー・ハッチャー | |
ヴァル・キルマー | |
セドリック・ジ・エンターテイナー |