●こんなお話
凄腕のエンジニアがプロジェクトを成功させて記憶を消して大金を得る仕事をやってるけど、新しい仕事したら報酬はないわ命狙われるわで大変な話。
●感想
マイケル・ジェニングスは企業から依頼を受け、新技術を解析して改良版を開発する天才エンジニアだった。彼の仕事は極秘扱いであり、契約が終了すると機密保持のために関連する記憶を消去する。記憶を失う代わりに莫大な報酬を受け取る特殊な働き方を続けており、その能力の高さから数多くの企業に重宝されていた。
ある日、大学時代の友人で巨大企業オールコム社の社長ジェームズ・レシックから、3年間に及ぶ極秘プロジェクトへの参加を依頼される。通常の契約期間を大きく超える長期案件だったが、報酬は9200万ドル以上という破格の金額だった。ジェニングスは依頼を引き受け、契約前に私物を預けたうえで研究施設へ入り、そこで植物学者レイチェル・ポーターと出会う。
3年後、記憶消去処置を受けたジェニングスは契約前の記憶しか持たない状態で目を覚ます。しかし彼を待っていたのは予想外の現実だった。受け取るはずの9200万ドルは存在せず、自分自身が報酬を放棄する書類へ署名していたというのだ。さらに返却された私物の中には、クリップやライター、サングラス、腕時計、回数券、切手、鍵など、一見すると価値のない品々が詰め込まれた封筒が残されていた。未来の自分がなぜ大金を捨て、このような品物を選んだのか理解できないまま会社を後にするが、その直後にFBIへ拘束される。
FBI捜査官ドッジは、政府の未来予測研究に関わっていた科学者ウィリアム・デッカーの死と産業スパイ事件について追及する。しかしジェニングスには3年間の記憶がなく、何も説明できない。取り調べ中、封筒に入っていた品物を利用して脱出に成功し、そのまま逃亡生活へ突入する。
逃走を続けるうちに、封筒の中身が偶然ではないことに気付き始める。消火装置を作動させるきっかけとなるライター、煙の中でも視界を確保できるサングラス、移動に役立つバス回数券など、どの品物も絶妙なタイミングで役立つのである。まるで未来を知っている人物が、必要な道具をあらかじめ用意していたかのようだった。
その後、ジェニングスは友人ショーティの協力を得ながら調査を進め、レイチェルと再会する。彼女から、記憶を失う前の自分たちが恋人同士だったことを知らされる。さらに研究中のジェニングスが何か重大な真実に気付き、以前とは別人のように変わっていったことも明かされる。
一方でレシックは、ジェニングスが生き延びたことに動揺していた。未来予測装置によって確認した未来では、彼はすでに死んでいるはずだったからだ。レシックは部下のウルフに命じてジェニングスを抹殺しようとし、地下鉄や市街地で激しい追跡劇が繰り広げられる。しかしジェニングスは封筒の品々を駆使しながら危機を切り抜け、少しずつ真相へ近づいていく。
やがてジェニングスとレイチェルは、3年間のプロジェクトの正体を突き止める。彼らが開発していたのは未来を観測できる装置だった。膨大な演算能力によって未来の出来事を映し出し、経済や政治、戦争の結果まで予測できる革命的なシステムである。しかし完成後に未来を確認したジェニングスは、その装置が世界を破滅へ導くことを知ってしまう。未来を知った人間が結果を変えようと行動し、その行動がさらなる混乱を呼び込むことで、最終的には世界規模の破局へつながる未来が映し出されていた。
そこでジェニングスは、未来予測装置を破壊することを決意する。記憶を消去された後の自分でも行動できるよう、必要な品々を封筒へ入れ、自ら9200万ドルの報酬を放棄していたのである。すべての謎が一本の線でつながり、ジェニングスとレイチェルはオールコム社への潜入を開始する。
研究施設へ侵入した二人は未来予測装置の破壊を試みるが、レシックとウルフが立ちはだかる。激しい銃撃戦の末、ジェニングスは最後に未来を確認し、自分がFBIの銃弾によって撃たれる未来を見る。しかし同時に、その運命を回避する方法も理解する。
高所の通路で対峙したレシックは、未来予測装置によって自らの勝利を確信していた。しかしその瞬間、腕時計のアラームが鳴り響く。未来を知っていたジェニングスは即座に身をかがめる。するとFBI捜査官が放った銃弾はレシックへ命中し、彼は転落して死亡する。
直後にジェニングスが仕掛けた工作によって未来予測装置は破壊され、研究施設は大爆発を起こす。世界を危機へ導く技術は完全に消滅し、現場へ到着したドッジ捜査官もジェニングスたちの行動が世界を救ったことを理解する。
その後、ジェニングスとレイチェルは新たな人生を歩み始める。温室栽培事業を営みながら平穏な日々を送る中、ジェニングスは封筒の中に入っていたフォーチュンクッキーの紙片を思い出す。鳥かごの底を調べると、そこには宝くじが隠されていた。それは未来予測装置によって当選番号を知った過去の自分が残していた最後の贈り物だった。こうしてジェニングスは愛する人と共に、未来に縛られない新たな人生を歩み始めておしまい。
主人公のマイケル・ジェニングスは、企業の依頼を受けて新技術を開発し、その代償として記憶を消去するという非常に変わった仕事をしています。まずこの設定が面白く、映画が始まってすぐに引き込まれました。自分が何をしたのか分からないまま大金だけを受け取る人生というのは、どこか不気味でありながらもSFらしい魅力があります。
そして物語が動き出すのは、9200万ドルの報酬が消え失せ、代わりにガラクタのような品々だけが残されていたところからです。普通なら落胆して終わりそうな状況なのに、そのガラクタが次々と命を救う道具になっていく展開は非常に楽しく観られました。ライターや回数券、サングラスや腕時計といった何の変哲もない物が、後になって重要な意味を持ち始める構成は見事です。
また、本作の魅力は「未来を知る」という設定をサスペンスに落とし込んでいる点にもあります。主人公は未来を直接覚えているわけではありませんが、過去の自分が未来を見据えて残したヒントを追いかけることで少しずつ真相へ近づいていきます。そのため、観客も主人公と同じ立場で謎解きを楽しめます。伏線が回収されるたびに「そういうことだったのか」と納得できる作りになっていました。
一方で、記憶喪失ミステリーと未来予測SFという二つの大きなテーマを同時に扱っているため、どちらももう少し掘り下げてほしかった気持ちもあります。特に記憶を失った主人公が過去の自分と向き合うドラマは、さらに濃密に描けた余地があったように感じました。
アクションについては地下鉄での追跡やバイクチェイス、終盤の銃撃戦など見応えのある場面が続きます。ただしジョン・ウー監督作品として観ると、『フェイス/オフ』や『M:I-2』のような派手な演出はやや控えめです。その代わり、本作ではアクションそのものよりも「どうしてこの状況を切り抜けられるのか」という伏線回収の面白さが前面に出ていました。
未来を変えるために未来を利用するというアイデアは今見ても魅力的で、ガラクタの意味が一つずつ明らかになっていく過程は最後まで飽きさせません。ジョン・ウー作品として見るよりも、SFミステリーとサスペンスアクションを融合させた娯楽映画として楽しむと満足度の高い一本でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/03/16 DVD 2023/07/15 U-NEXT 2026/06/13 U-NEXT
| 監督 | ジョン・ウー |
|---|---|
| 脚本 | ディーン・ジョーギャリス |
| 原作 | フィリップ・K・ディック |
| 出演 | ベン・アフレック |
|---|---|
| アーロン・エッカート | |
| ユマ・サーマン | |
| ポール・ジアマッティ | |
| コルム・フィオール | |
| ジョー・モートン |


