映画【ギャング・イン・ニューヨーク】感想(ネタバレ):組織の頂点を歩む一人の男の人生譚

gotti
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●こんなお話

 ニューヨークのマフィアのボスさんの話。

●感想

 実在したマフィアのボスの人生を、若き日から組織の頂点に立ち、やがて獄中に入るまでを一気に描ききるという骨太な構成の作品です。実話をベースにしているだけあって、時代背景や登場人物の名前、関係性が次々に提示されていくのですが、こちらにその時代のマフィア事情や基礎知識がある程度ないと、誰が誰で、どういった出来事が起きているのかを理解するのがなかなか大変です。会話の中で、まるで当然のように人名が飛び交い、そのたびに「この人は一体どの立場なのか」と頭の中で整理することに追われてしまいます。

 ストーリーは、主人公がどのようにして組織の中で成り上がっていき、どんな選択をして、いかにして周囲との関係性を築いていったのかを淡々と積み重ねていくかたちで進行します。構成としては、出来事を次から次へとつなぎ合わせて描いていくスタイルで、時間経過とともに主人公の環境や立場が変わっていく様子はよくわかります。ただ、それがドラマとして胸に迫ってくるような展開や、映画ならではのテンションを伴ってくるものではなく、事実を列挙されているような感覚に近い印象を受けました。

 マフィア映画といえば、ファミリーの絆や裏切り、血のつながりではない仲間たちとの強固な関係性、そして家庭と裏社会の狭間で揺れる男たちの姿が醍醐味となります。しかしこの作品では、家族との距離感や葛藤がしっかりと描かれているとは言いがたく、組織の中で主人公がどういう立ち位置にあったのか、人間関係の深さのようなものがあまり掘り下げられていないように感じました。そのため、彼が組織内外から信頼され、あるいは恐れられていたという説得力も薄く、ニューヨークの人々から「愛された存在だった」という設定も、映画の中ではなかなか実感を伴っては届いてきません。

 それでも、静かに、そして確かに積み重ねられていく時間の流れの中で、ひとりの男の軌跡をたどるドキュメンタリー的な価値は感じられます。豪奢なパーティや密談、裏切りの応酬など、マフィア映画でよく見られる演出も控えめに取り入れられており、派手さはないけれどリアリズムを大事にしている姿勢は伝わってきます。結果として、主人公がどんな人生を歩み、どこにたどり着いたのかを冷静に見つめる視点を持った作品だったとも言えます。

鑑賞日:2019年6月20日 DVD

監督ケヴィン・コナリー 
脚本レオ・ロッシ 
レム・ドブス 
製作総指揮ジョン・トラボルタ 
出演    ジョン・トラボルタ 
ケリー・プレストン 
スペンサー・ロフランコ

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