映画【パンドラム】感想(ネタバレ):宇宙船で繰り広げられる極限のサバイバル

pandorum
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●こんなお話

 宇宙船でクリーチャーだったり病気だったりと大変なことになる話。

●感想

 目を覚ますと、そこには静まり返った宇宙船。乗っていたはずの他の乗客たちの姿は消え、薄暗い船内にぽつんと取り残された主人公が、混乱しながらも状況を把握しようと動き出すところから物語は始まっていきます。序盤は、とにかくその密閉された空間の息苦しさと、何が起こるかわからない不安感に包まれていて、観ていても自然と呼吸が浅くなってしまうような緊張感が続いていました。

 主人公がダクトの中を這うように進んでいくシーンでは、カメラの動きと音の演出が非常に効果的で、狭さの圧迫感が画面越しにもしっかりと伝わってきます。何が潜んでいるのかわからない薄暗い通路を進むという、シンプルながら本能的な怖さが感じられ、SFホラーというジャンルの入り口としてとても引き込まれる展開だったと思います。そして物語が進むにつれて、謎のクリーチャーが姿を現し、乗組員たちを襲っていくことで、宇宙船内で何が起きているのか、どこへ向かっているのか、その謎が深まっていく構成になっています。

 ただし、物語が進むにつれて少しずつ息切れするような印象もありました。まず、映像の演出が全体的にかなり暗めで、場面によってはストロボのようにチカチカと点滅するような描写が続くため、ずっと集中して画面を見ているのがやや大変に感じる場面もありました。また、物語の舞台となる宇宙船の構造についてほとんど説明がされず、最初は密閉された小さな施設かと思っていたのに、実際にはとても広くて、次から次へと場所が変わっていくので、今自分がどこにいるのか、そして目的地がどこなのかといった空間的な把握がやや難しく、没入感に少し影響があったかもしれません。

 タイトルにもなっている「パンドラム」という病気の設定も、序盤から中盤にかけてのミステリー要素としては魅力的だったのですが、クライマックスでその病気にかかった人物との戦いに物語の焦点が移っていく流れが、やや唐突に感じられました。それまでのクリーチャーとの対決の緊張感とは少し異なる方向に進んでしまい、個人的にはやや肩透かしを受けたような印象もありました。

 それに、クリーチャーの正体についての具体的な説明がなく、視覚的なインパクトに頼りすぎた印象もありました。加えて、冷凍睡眠から目覚めた登場人物たちの設定や背景にも疑問が残り、特に病気にかかっていた人物がなぜ一緒に眠っていたのか、その理由が最後まで腑に落ちないまま終わってしまったのが気になります。途中で登場するコックのような人物が、なぜ全ての事情を把握しているのかという点も、あまり明確には描かれておらず、唐突に全体像を説明するセリフが続く展開もやや説明的すぎる印象を受けました。

 とはいえ、作品全体を通して感じた閉塞感や、突如襲いくる恐怖の演出はしっかりと印象に残るものがありました。特に宇宙という逃げ場のない舞台で、人間が直面する極限状態を描いている点では、非常に刺激的な映像体験だったと思います。細かい部分では気になる点も多かったですが、それでもホラーやサスペンス、SFが好きな人にはおすすめできる1作だと思いました。

☆☆☆

鑑賞日:2011/07/11 DVD

監督クリスティアン・アルヴァルト 
脚本トラヴィス・ミロイ 
出演デニス・クエイド 
ベン・フォスター 
カム・ジガンデイ 
アンチュ・トラウェ 
カン・リー 
エディ・ローズ 
ノーマン・リーダス 
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