●こんなお話
一人暮らしの女の子のもとにパンダの親子がやってきて生活する話。
●感想
おばあちゃんが電車で出かけていったあと、家にひとり残された主人公の少女。近所の人たちは、ひとりになって寂しいのではないかと気にかけて声をかけてくれるけれど、少女の前に突如現れたのは、なんと人の言葉を理解するパンダの親子だった。あっという間に仲良くなって一緒にごはんを食べてお風呂に入って、とてもにぎやかな共同生活が始まっていく。
少女はパンダたちとともに、お父さん役と赤ちゃん役のような形で、疑似家族として暮らしていくことになり、その関係性が微笑ましくて画面を見ているだけで笑顔になってしまう。パンダ親子はとても陽気で、どんなことにもくよくよせず、何が起きても前向きな姿勢を崩さない。その明るさが、まるで絵本のページをめくるような軽やかさで、観ているこちらの心をやさしくしてくれます。
『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』では、サーカスの動物たちとともに大雨による洪水に巻き込まれてしまったり、機関車が暴走したりと、子ども向け作品ながらもなかなかのスペクタクルが盛り込まれていて、画面の動きがとても楽しかったです。それらの困難を、あくまで前向きな気持ちで乗り越えていく少女とパンダたちの姿が描かれていて、むしろ大人のほうが見習いたくなるような頼もしさすら感じさせられました。子どもの柔軟な適応力や、想像力の豊かさに目を向けた作品とも受け取れます。
パンダたちのデザインもとてもかわいらしく、赤ちゃんパンダのポコポコした動きや大きな体でドシンドシン歩くパパンダの存在感が、画面に映っているだけでうれしくなってしまうような魅力に満ちていました。キャラクターたちのやり取りやしぐさの一つひとつに温かみがあり、手描きアニメーションの持つやさしさが全体を包んでいるのが素敵でした。
そしてテーマ曲も、一度耳にすると離れなくなるような印象的なメロディと歌詞で、映画の明るく軽快なトーンをしっかりと支えていました。歌が流れるだけで物語の世界に戻ったような気持ちになれるのは、こうした短編作品ではなかなか貴重な体験だと感じます。
『雨ふりサーカス』のなかでは、サーカス団の動物たちとの交流やハラハラするような展開もあって、それでいて一貫して明るくポジティブなトーンで貫かれているのが好印象でした。個人的には、おばあちゃんが最初の作品のように登場せず、老人ホームのような施設にいる描写があるだけだったので、いつまた帰ってくるのか少し気になりながら見てしまう部分もありました。それでも、全体としてはとても温かく、元気をもらえるような作品でした。
☆☆☆☆
鑑賞日: 2018/04/14 NETFLIX
演出 | 高畑勲 |
---|---|
脚本 | 宮崎駿 |
出演(声) | 杉山佳寿子 |
---|---|
熊倉一雄 | |
丸山裕子 | |
太田淑子 | |
山田康雄 |
コメント