●こんなお話
暗殺者集団に拉致されて育てられたレディ・ウェポンの話。
詳細ネタバレあらすじ
ローマのホテルで、一人の美女が暗殺を実行する。標的に近づいた女性は、相手を油断させて殺害すると、そのままホテルから逃走する。CIA捜査官のジャック・チェンらはその女性を追跡するが、逃走中の車がロケット弾による攻撃を受け、追跡は混乱する。ジャックたちが女性を確保しようとしたところ、別の女が乗ったリムジンから銃撃を受け、CIA側は大きな被害を受ける。この一連の事件を指揮していたのが、国際的な暗殺組織を率いるマダムMだった。映画の冒頭から、女性を暗殺者として育成し、世界各地の犯罪組織から依頼を受けて殺人を実行する組織の存在が示される。
マダムMは、世界各地から容姿と運動能力に優れた少女たちを誘拐していた。誘拐された少女たちは人里離れた孤島へ連れて行かれ、外部との接触を断たれた状態で暗殺者としての訓練を受ける。少女たちは格闘技、射撃、身体能力を鍛える訓練などを繰り返し、任務のために必要な技術を身につけていく。日本の映画資料や海外の作品情報では、シャーリーンやキャットたちは6年間にわたって過酷な訓練を受けたとされている。
その少女たちの中に、シャーリーンとキャットがいた。シャーリーンは幼いころに母フェイと引き離され、キャットもまたマダムMに連れ去られた少女だった。過酷な環境の中で2人は親しくなり、訓練中も互いを助けながら生き延びていく。一方、ジンはシャーリーンやキャットとは異なる冷静さを持ち、厳しい訓練を一人で乗り越えていく。
6年間の訓練を終えた少女たちには、最後の試験が待っていた。それは、これまで仲間として訓練してきた少女同士を戦わせ、生き残った者だけを暗殺者として認めるというものだった。閉ざされた空間で少女たちは互いに襲いかかり、これまで一緒に過ごしてきた仲間が次々と倒れていく。シャーリーンとキャットも戦うことになるが、2人は互いを殺すことができず、共に生き残る。そしてジンも最後まで戦い抜き、最終的にシャーリーン、キャット、ジンの3人が生存者となる。
しかし、試験を終えた3人を待っていたのは自由ではなかった。マダムMは少女たちを正式な暗殺者として仕上げるため、卒業の場でも彼女たちを支配する。薬物を利用して抵抗できない状態にしたうえで、男たちを使った過酷な仕打ちを受けさせる。
暗殺者となったシャーリーン、キャット、ジンは、世界各地へ送り出される。3人はマダムMの命令を受け、標的に接近して殺害する任務を次々とこなしていく。スペインやフィリピン、香港などを舞台にした任務が描かれ、3人が一流の暗殺者へ変貌していく。
一方、ジャックはマダムMの組織を追い続けていた。ローマでの事件をきっかけに、世界各地で若い女性が姿を消している事件と暗殺事件の関連を調べ、マダムMの組織に近づいていく。そして香港でシャーリーンを追跡することになる。
香港で任務を遂行していたシャーリーンは、ある女性の姿を見て動きを止める。それは幼いころに別れた母フェイだった。長い間、生死すら分からなかった母親が目の前に現れたことで、シャーリーンは暗殺者としての任務よりも、自分の過去と母親への思いを意識するようになる。
ジャックもシャーリーンを追ってフェイの周辺へ近づいていく。シャーリーンは当初、CIA捜査官であるジャックを警戒するが、何度か接触するうちに2人の距離は縮まっていく。ジャックはシャーリーンが単なる冷酷な暗殺者ではなく、マダムMに人生を奪われた女性であることを知り、彼女が過去を取り戻すために協力しようとする。
しかし、シャーリーンが母フェイと接触したことをきっかけに、ジンもフェイの存在を知る。ジンはフェイのもとへ向かい、彼女を襲撃する。フェイは負傷し、ジャックもジンと戦うことになるが、ジンの戦闘能力は非常に高く、ジャックは苦戦する。そこへシャーリーンが駆けつけ、母親を襲ったジンと直接対決する。
シャーリーンとジンは室内で激しく戦い、シャーリーンは母フェイを守るために戦い、最後にはジンを倒す。フェイは負傷し、シャーリーンとジャックによって病院へ運ばれる。
母親との再会によって、シャーリーンはマダムMの支配から抜けたいという思いを強くする。キャットも同じように自由を求めており、2人はマダムMに最後の任務を成功させれば自由にしてほしいと求める。マダムMは2人の要求を受け入れ、最後の仕事として日本人のリュウイチが関係する任務を与える。
リュウイチは日本の犯罪組織を率いる人物として登場する。マダムMはリュウイチから依頼を受け、組織内の裏切り者を始末する仕事としてシャーリーンとキャットを送り込む。しかし、これはリュウイチが仕掛けた罠だった。リュウイチには、過去にマダムMの暗殺者によって仲間を殺されたことへの復讐があり、シャーリーンたちを誘い出すために暗殺依頼を利用していた。
シャーリーンとキャットが指定された場所へ向かうと、待ち受けていたリュウイチ側の人間たちと戦闘になる。2人は罠に気づくが、すでに逃げ切るのは難しい状況だった。リュウイチはマダムMを捕らえ、彼女を殺害する。キャットも捕らえられ、シャーリーンだけがその場から逃げ延びることになる。
逃走後、シャーリーンはジャックと再び会う。病院にいるフェイを気にかけていたジャックにシャーリーンが連絡し、2人は海辺で落ち合う。
翌朝、シャーリーンはジャックのもとを去る。ジャックの靴には、2人が再び出会う可能性を示すメッセージが残されている。シャーリーンはジャックと一緒に逃げるのではなく、捕らわれたキャットを助けるためにリュウイチのもとへ戻る。
シャーリーンが戻ったとき、キャットはすでにリュウイチから拷問を受けていた。シャーリーンはキャットを救おうとするが、2人の間には防弾ガラスがあり、すぐに助け出すことができない。リュウイチはシャーリーンの目の前でキャットを殺害する。
シャーリーンとリュウイチの戦いは、銃撃だけではなく、近距離での打撃や蹴り、身体能力を利用した攻撃が次々と繰り出され、最後には相手の背骨を破壊する必殺技を使ってリュウイチを倒す。
リュウイチを倒したシャーリーンは、マダムM、ジン、キャット、そしてリュウイチとの戦いを終える。しかし、彼女が完全に自由になったわけではない。CIAに追われる立場であることは変わらず、ジャックの前に普通の女性として戻ることもできない。
その後、ジャックとフェイは寺を訪れる。ジャックはそこでシャーリーンについて思いを巡らせる。一方、シャーリーンも別の場所でキャットの冥福を祈り、ジャックとの再会を願う。
最後にジャックは人混みの中を歩きながら、彼女を探すように人混みの中を走り出す。離れた場所からジャックを見つめるシャーリーンの姿が映し出されておしまい。
●感想
子どもを誘拐して暗殺者として育て、最後には仲間同士で殺し合いをさせて選抜するというマダムMの組織は、改めて考えると相当に回りくどい人材育成システムです。世界中から少女を集め、何年もかけて格闘技や暗殺術を仕込んだうえで、最終試験まで生き残らせるという、とんでもない時間と労力をかけています。それだけに、本作の暗殺者育成システムは設定だけでもかなり強烈でした。
しかも、シャーリーンとキャットは幼いころから一緒に訓練を受け、厳しい環境を互いに支えながら生き抜いてきます。ところが、最後の試験では本来なら仲間同士で殺し合わなければならないという展開になります。それでも2人は互いを殺すことができず、ジンとともに3人で生き残ります。このあたりは、単純に「最強の一人を決める」という話ではなく、友情を持ったまま殺人兵器にされてしまった少女たちの関係が描かれていて面白いところでした。
そして、ようやく訓練を終えたと思ったところで、さらにマダムMによる過酷な仕打ちが待っているのもすごいです。6年間も戦闘訓練を受けて、最後の殺し合いまで生き残ったのに、そこからさらに組織に従わせるための支配が続きます。ここまで来ると「一流の暗殺者を育てる」というより、少女たちの人生そのものをマダムMが支配している状態です。
暗殺者になってからの展開もかなり早いです。シャーリーンたちは世界各地で任務をこなし、その一方でシャーリーンは生き別れになった母フェイと再会します。さらに、彼女を追っていたCIA捜査官のジャックとも関係を深めていきます。暗殺、母親との再会、CIA捜査官との恋愛、仲間との対決が次々と入ってくるため、92分という短い上映時間の中にかなり多くの要素を詰め込んでいます。
特にジャックとの恋愛は展開が非常に速く、こちらが気持ちを整理している間にどんどん関係が進んでいきます。冷凍車の中に閉じ込められる場面などを経て、シャーリーンとジャックの距離が急速に縮まっていくため、「さっきまで追われる側と追う側だったのに、もうそこまで進むのか」と驚かされます。暗殺者とCIA捜査官という本来ならかなり複雑な関係なのですが、本作では香港映画らしい勢いで一気に恋愛へ持っていくところが面白いです。
シャーリーンの母フェイとの再会も、もっと時間をかけて描けばかなりドラマチックになりそうな設定です。幼いころに母親から引き離され、暗殺者として育てられた女性が、成長してから母親と再会するわけですから、そこだけでも一本の映画が作れそうです。しかし本作はそこをじっくり掘り下げるより、ジンによる襲撃からシャーリーンとの対決へと素早く進んでいきます。このあたりにも、物語よりアクションを優先する作品の性格がよく出ています。
終盤のリュウイチについては、個人的には少し唐突に感じました。マダムMの組織との因縁を持つ人物として登場するものの、シャーリーンとの関係が長く描かれているわけではないため、キャットを殺されたシャーリーンがリュウイチと戦うクライマックスは、物語上の因縁よりも「最後に強敵と戦うための舞台」として用意された印象があります。海外の作品紹介でも、リュウイチがマダムMと関係を持ち、シャーリーンたちを罠にはめる展開が確認できます。
ただし、アクション映画として見ると、ここはかなり楽しめます。特にシャーリーン、キャット、ジンの3人がそれぞれ異なる動きで戦うところは見応えがあります。銃撃戦だけで押し切るのではなく、蹴りや組み技、身体を使ったアクロバティックな動きを組み合わせているので、ストーリーの急展開に置いていかれそうになっても、アクションが始まると画面に引き戻されます。
本作は、少女たちを暗殺者に育てるという設定、シャーリーンとキャットの友情、母親との再会、ジャックとの恋愛、マダムMとの対決、そして香港映画らしい肉弾アクションを約90分に詰め込んだ作品です。ストーリーをじっくり積み上げるタイプではなく、強烈な設定を提示して、次から次へと事件とアクションを繰り出していく作りになっています。そのため、展開の速さに戸惑うところはありますが、「美人女性暗殺者が派手なアクションを繰り広げる香港映画」という目的で見ると、かなり分かりやすい魅力を持った作品でした。
☆☆☆
鑑賞日:2020/05/31 DVD 2026/08/17 Amazonプライム・ビデオ
| 監督 | チン・シウトン |
|---|---|
| アクション監督 | チン・シウトン |
| 出演 | マギー・Q |
|---|---|
| アンヤ | |
| ダニエル・ウー | |
| アルメン・ウォン | |
| アンドリュー・リン | |
| チェン・ペイペイ | |
| ジュエル・リー |


