●こんなお話
人間を喰らう怪物を捕まえた高校生たちが、怪物を拷問したりしていくうちにどっちが怪物か分からなくなっていく
●感想
人気のない裏路地で、人間を喰らう怪物の姉妹が静かに獲物を狙っている。物語は、そんな凄惨なシーンから始まる。そこから舞台は学校へ移り、主人公はクラス費を盗んだという濡れ衣を着せられ、いじめグループのターゲットにされる。担任教師もまったく頼りにならず、彼の孤立は深まるばかり。
罰として老人の住むアパートでのボランティア活動を命じられた主人公といじめっ子たちは、そこで暴力的な“介護”を始める。さらに、老人の部屋に金塊があるという噂を聞きつけ、夜中に忍び込む。だが、そこにいたのは“怪物”。その怪物は車に轢かれて意識を失い、彼らはそのまま学校のプール施設に監禁する。
そこで高校生たちは異常な「実験」を始める。日光を浴びせると苦しみ、抜いた歯がすぐに生え変わるなど、怪物の特性を面白がって観察する。そのうち、いじめっ子のひとりが報復として怪物の血を担任の水筒に混入。体育の授業中に具合を崩した教師は、搬送中に日光を浴び、燃え上がって死亡する。
事件はニュースで報道され、怪物の姉が妹の行方を探して街に現れる。姉の襲撃は始まり、バスに乗る女子生徒が犠牲に。いじめグループは怪物を倒すため罠を張って待ち構えるが、主人公は密かに裏切り、彼らを怪物に襲わせる。
最後は怪物の姉妹と対峙し、日光を浴びせて2人とも焼き尽くす。そしてすべてが終わったかに見えたが、ラストシーンでは主人公がクラスの飲み物に怪物の血を混入。全員が燃え上がり、阿鼻叫喚でおしまい。
いじめというよりも暴力と支配による“支配構造の地獄”が前半から延々と描かれ、観る者の神経を削ってきます。いじめっ子たちはサディスティックに暴れ回り、教師たちも無能かつ残酷。特に担任は「あなたに原因がある」と被害者を責め、「この子の父親は刑務所に…」と加害者の傷をえぐる発言までしてくるという。
怪物を捕らえ、拷問のような扱いをして楽しむ高校生たちの姿には、人間の醜さが強烈に投影されていると思いました。怪物より人間のほうがよほど恐ろしく、道徳も理性も失った存在にしか見えなかったです。
ただ、この映画は決して不快感だけで終わらせず。ホラー映画・スプラッター映画としてのテンションも高く、怪物の造形や殺戮シーンの迫力は文句なし。YEN TOWN BANDの「My Way」が流れるタイミングも印象的で、作品の雰囲気にバシッとハマっていたと思います。
そしてラストのカタルシスは圧倒的。最終的に復讐が達成されるくだりは問答無用の爽快さがあり、観終わったあとの余韻をしっかり残してくれました。人間の醜さと暴力、復讐と破壊、そして正義も道徳も崩れた世界を描ききった、最高で最低なダークホラー映画でした。
☆☆☆☆
観賞日:2018/11/30 キネカ大森 2024/04/25 Hulu
監督 | ギデンズ・コー |
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脚本 | ギデンズ・コー |
出演 | トン・ユィカイ |
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ケント・ツァイ | |
ユージェニー・リウ | |
チェン・ペイチー | |
ジェームズ・ライ | |
タオ・ボーメン | |
リン・ペイシン |
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