映画【ミミックⅢ】感想(ネタバレ):監視カメラ越しの恐怖と再生|家族とユダの血統が交差するサスペンス劇

Mimic3:Sentinel
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●こんなお話

 病気で外に出られない主人公が窓からカメラで近所を盗撮するのが趣味でユダの血統が現れて大変な話。

●感想

 病を抱える主人公は、自宅アパートの窓辺に腰を下ろし、外の様子をじっと見つめていた。彼の唯一の趣味とも言えるのが、望遠レンズ付きのカメラで近隣住人の様子をこっそり覗き見ること。誰かが通り過ぎればその姿を追い、何気ない仕草ひとつも見逃さずレンズ越しに記録する。そんな主人公の身の回りには、母親と妹がいて、妹とは特に行動をともにすることも多い。

 ある日、妹と一緒に怪しい人物を尾行してみたり、近所の動向を探ってみたりと、小さなスリルを共有していた。ところが、妹の恋人がどうやら麻薬の売人らしく、主人公としては素直に歓迎できない。さらに妹が家に連れてきた若い女性が、どうやら主人公に好意を抱いているようなのだが、彼は強いアレルギー体質を抱えており、近づくと体に異変が出てしまう。そんなジレンマの中、彼の世界は少しずつ奇妙な方向へと傾いていく。

 その矢先、主人公は殺人現場を目撃する。すぐに警察に通報するが、来てくれた警官はどこか頼りなく、真面目に取り合ってくれる様子がない。さらにその警官は、気づけば母親と親密な関係に発展しており、家庭内の力関係にも微妙な変化が生まれていた。そんな中、主人公が「ゴミ男」と呼んで疑っていた近隣住人の部屋に、妹が忍び込んでしまい、一触即発の状態に。緊張感が走る展開の中で、このゴミ男がただの変人ではなく、実はある重大な秘密を握る博士であることが明らかになる。

 博士は、過去にユダの血統と呼ばれる存在に関する研究をしており、実は警官に見せかけた別の組織の人間たちと接触していた。彼らが集まり、ユダの血統について話し合っている最中、その忌まわしい存在が襲来。混乱の中で、妹は重傷を負い、博士によって囮として扱われてしまう。理不尽とも言える状況が続く中、物語はさらに緊迫した展開へと進んでいく。

 博士の部屋には、主人公の恋人になりかけていた女性や、母親も集まり、混沌とした空気の中でユダの血統が再び姿を現す。母親は背後から刺されて命を落とし、部屋は火災に包まれ、ヒロインは重度の火傷を負う。博士自身も抵抗むなしく、ユダの血統の手にかかる。もはや逃げ場のない主人公は、冷蔵庫の中に身を潜め、薬品やガスの影響で爆発が起こる。すべてを呑み込んだ爆風のあと、主人公は病院のベッドで静かに目を覚ます。

 作品を通して終始流れるゆるやかな音楽が、物語のトーンを不思議なほど軽やかに保ちつつ、実際にはなかなか物語が動かない印象も受けました。上映時間は80分に満たないものの、物語が本格的に動き始めるのは後半に入ってからで、前半は主人公の盗撮行為を通じて近隣住人の紹介がゆっくりと進む構成です。ユダの血統による惨劇が起こっているのに、主人公はその核心を目撃する直前に視線を外し、また見に戻ってくるという惜しい展開が何度か続き、もどかしさを感じることもありました。

 主人公の行動も非常に特徴的で、どんな危機が目の前で起きていても基本的に見ているだけ。動こうとしないその姿に、ある種の新鮮さを感じつつも、観客としては感情移入が難しいところもあったかもしれません。アレルギーによって外に出られないのかと思いきや、意外と外に出ていたりするので、身体的な制約がどの程度のものなのかが曖昧に見えました。

 クライマックスでは妹がユダの血統に刺された上で囮にされ、車のトランクに閉じ込められるなど、かなり過酷な目に遭います。さらに母親も命を落とし、家族全体が酷い目に遭うという重たい展開が続きます。一方で母親があの警官と親密になっている様子も描かれ、どんな感情を抱けばよいのか戸惑う場面もありました。

 ランス・ヘンリクセンが博士の役どころとして登場しており、登場時には期待感が高まりましたが、彼の行動原理がつかみづらく、終盤では妹を囮にして逃走を試みるなど、善悪の境界が見えにくくなっていました。事情を知っているらしい警官風の人物たちも次々に襲われてしまい、彼らが何を目指していたのか明確にならないまま物語は突き進みます。

 1作目や2作目とは作風が大きく異なっており、そこに挑戦的な面白さを感じました。けれど、事件の核心に迫る前の描写が長く、体感としては少し長く感じてしまったのも事実です。独特なキャラクターと緩やかなテンポで描かれるホラー・サスペンスとしては、ジャンルの枠を超えた風変わりな味わいのある一本だったと思います。

鑑賞日:2022/09/07 U-NEXT

監督J・T・ペティ 
脚本J・T・ペティ 
出演カール・ゲアリー 
アレクシス・ジーナ 
アマンダ・プラマー 
ジョン・カペロス 
ランス・ヘンリクセン
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