●こんなお話
反政府組織の頭目の娘に近づく潜入捜査をするけれど恋愛トラブルになる話。
●感想
反政府組織が複数存在する架空の時代背景のもと、華やかな遊郭のシーンから始まります。政府の人間である金城武演じる主人公は、偶然立ち寄った遊郭でチャン・ツィイー演じる盲目の踊り子と出会い、彼女に惹かれていきます。しかし彼女は実は反政府組織の刺客であり、主人公を暗殺するために接近していたことが明らかになります。
しかし、金城武は彼女を捕まえるどころか、逆に逃がすことになります。彼女が敵の頭目の娘であることを知り、単なる敵ではないと感じ始めたのです。そこから始まる二人の逃避行。追手を殺さずに倒していく金城武のスタイルが、彼の葛藤や優しさを象徴していると思います。上司であるアンディ・ラウに時折報告しながらも、彼自身も次第に国や命令よりも彼女の存在に重きを置いていく姿が印象的でした。
二人の逃避行を朝廷の上層部が察知し、彼らを粛清するための追手が差し向けられます。金城武は命令に背くか、従うかの狭間で葛藤しながらも、愛と忠義の間で揺れ動くことになります。
さらに、反政府組織のアジトに乗り込んだ際には、金城武とアンディ・ラウの正体が既に知られていたという事実が判明。しかも、盲目と思われていたチャン・ツィイーは実は視力を持っていたことが明らかに。さらに、アンディ・ラウもまた、実は反政府組織の一員で、政府に潜入していたスパイだったという。
彼は長年チャン・ツィイーを想い続けていたにもかかわらず、彼女の心はわずか数日で金城武に傾いてしまったことに激しい嫉妬を抱きます。「俺は3年待ったのに、あいつは3日で心を奪った」と嘆く姿が、彼の苦悩と執着を表現していると思います。こうして、チャン・ツィイーを巡る男たちの戦いは、雪の中での決闘という切なくも美しいクライマックス。
アクションあり、ロマンスあり、裏切りと葛藤のドラマもありと、非常に見応えのある作品でした。特にチャン・ツィイーは、舞台での踊りや戦闘シーンなど見せ場が多く、圧巻の存在感を放っていました。金城武とアンディ・ラウという2人の実力派俳優が、彼女に振り回されつつも真剣に向き合う姿が、本作の核心を担っています。
序盤の遊郭のシーンから衣装やセット、美術などが非常に色鮮やかで美しく、映像面でも強い魅力を感じました。ただし、スパイ映画としての緊張感――すなわち「正体がバレるかどうか」というスリルについてはややあっさり描かれており、身元がすぐに明かされてしまうため、心理戦としての奥行きは控えめだったかもしれません。
とはいえ、華麗な映像美と息をのむアクション、そして愛と裏切りの感情の応酬が織り成すドラマとして、非常に印象に残る一本でした。常に走り続けるような金城武とチャン・ツィイーの体力勝負にも感心させられる、濃密な時間を楽しむことができました。
☆☆☆
鑑賞日:2022/09/09 Amazonプライム・ビデオ
監督 | チャン・イーモウ |
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脚本 | チャン・イーモウ |
リー・フェン | |
ワン・ビン |
出演 | 金城武 |
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ソン・タンタン | |
チャン・ツィイー | |
アンディ・ラウ |