●こんなお話
無表情の詠春拳の使い手のお父ちゃんがお世話になった人が傷つけられて、再び詠春拳を使って悪人に立ち向かう話。
●感想
チョン・ティンチは『イップ・マン 継承』において葉問との詠春拳の決闘に敗れた後、武術の世界から身を引き、裏稼業も完全に断って香港で息子フォンと静かな生活を送っている。詠春拳を使うことも封じ、日々は食料品店を営みながら慎ましく過ぎていくが、心の奥底には武術家としての誇りを押し殺したままの日常が続いていた。
ある日、配達の途中で麻薬中毒の女性ナナと、その友人であるジュリアが麻薬密売人ツオ・サイ・キットに追われている場面に遭遇し、見過ごせず助けに入る。ティンチは単身でキットの手下たちを退けるが、この一件によってキットの逆恨みを買い、意図せず裏社会の抗争に足を踏み入れてしまう。警察の介入によってその場は収束するものの、キットは汚職警官の力を使って釈放され、ナナとジュリアもジュリアの兄でバーを経営するフーの名を出すことで解放される。一方でティンチは夜遅くに釈放され、息子と約束していた食事を果たせなかったことで、父としての無力さを噛みしめることになる。
その夜、キットは報復としてティンチの店に火を放ち、ティンチとフォンは間一髪で逃げ延びる。執拗な追跡の末、ジュリアとフォンはフーの家に匿われ、ティンチはフーが経営するバー「Gold Bar」で働き始める。フーはかつて武術に身を置いていた人物であり、二人の間には次第に信頼と友情が芽生えていく。しかしキットは組織を束ねる姉クワンの忠告を無視し、ヘロイン密売に手を染め、暴力と欲望をエスカレートさせていく。
やがてキットはナナを見つけ出し、口封じのためにヘロインを無理やり飲ませて殺害するという非道な行為に及ぶ。この事件に怒りを爆発させたティンチとフーは、キットのアジトに乗り込み、クワンも交えた壮絶な乱闘へと発展する。クワンは組織の秩序を守るため、弟に制裁を下し、ヘロインの隠し場所を吐かせる。フーはその情報をメディアに流し、裏社会の悪事を白日の下にさらす。
しかしキットと結託した汚職警官の策略により、フーは麻薬所持の濡れ衣を着せられて逮捕され、デヴィッドソンの手に渡り、強制的な戦いの末に命を落とす。フーの死を知ったティンチは怒りと悲しみを抱え、再び詠春拳を解放し、デヴィッドソンとの一騎討ちに挑む。激闘の末、ティンチは武術家としての誇りと自分自身を取り戻してデヴィッドソンを倒す。
混乱の中で汚職警察幹部は失脚し、ティンチは解放される。デヴィッドソンは逃走の最中に殺し屋に襲われて命を落とし、騒動は終息する。
ティンチはジュリアとフォンと再会し、三人で食事をする穏やかな時間を迎える。ミッドクレジットでは、フォンが自らの力でいじめに立ち向かう姿が描かれておしまい。
単純明快な物語の中に、多彩で工夫を凝らしたアクションが惜しみなく詰め込まれた作品でした。敵役のキャストが非常に豪華で、それぞれが強烈な存在感を放っており、主人公が立ち向かっていく構図そのものが大きな見どころにだと思います。
寡黙で感情を表に出さない主人公が、家族や居場所を奪われることで再び拳を振るう流れは、古典的とも言える展開ですが、わかりやすさがむしろ心地よく、アクションによって物語が語られていく構成が印象的でした。感情の起伏を細かく説明せずとも、動きと衝突で伝えていく点が本作の強みだと感じます。
トニー・ジャー、ミシェル・ヨー、デイブ・バウティスタといった国際色豊かな俳優陣が次々と立ちはだかる展開は非常に楽しく、それぞれの立ち位置や役割が明確で、アクション映画としての満足度を大きく高めていました。
描写の単純さや設定の粗さを感じる部分がないわけではありませんが、詠春拳・張天志として再び立ち上がり、大きく構える主人公の姿は強烈に心に残ります。一本筋の通ったヒーロー像を、真正面から描いた快作でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2019/07/12 DVD 2026/01/22 U-NEXT
| 監督 | ユエン・ウーピン |
|---|---|
| アクション監督 | ユエン・シュンイー |
| 脚本 | エドモンド・ウォン |
| チャン・タイリー |
| 出演 | マックス・チャン |
|---|---|
| デイヴ・バウティスタ | |
| ミシェル・ヨー | |
| トニー・ジャー |



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