映画【降霊】感想(ネタバレ):見えないのに怖い…静寂と違和感が作る“想像する恐怖”の秀逸な映画

Kôrei
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●こんなお話

 少女誘拐をきっかけに霊能力をもつ妻を持つ夫がいろいろする話。

●感想

 何かするでもなく、ただ“いる”だけの幽霊の怖さにショックを受けるものでした。しかも、その幽霊がしっかり画面に出てくるわけではなくて、無音の中で主人公たちが家の中を歩き回るだけのシーンが続く。でも、背後にある鏡や、西日が差し込む静かな部屋、少しだけ空いた扉の隙間──そうした細部に「何かいるんじゃないか?」と思わせられる演出が本当に緊張感たっぷりでよかったです。

 幽霊をはっきり見せるわけでもないのに、見ている側が勝手に恐怖を想像してしまう。そういう“見せない”ことで生まれる恐怖の演出がうまくて、とても面白かったです。静寂の中、ぼんやりと背後に映る幽霊や、腕だけが見えるシーンなども心拍数が上がるポイント。ジャンプスケアではなく、じわじわくるタイプの怖さが効いていたと思います。

 ただ、ホラー演出は素晴らしい一方で、ストーリーにはあまり乗れなかったというのが正直な感想で。冒頭で少女がケースに入り込むんだけど、それに気づかず役所さん演じる男がそのまま持ち帰ってしまう展開は、ちょっと無理があるように感じました。明らかに重さが変わっているだろうし、「いや気づくだろ」と突っ込みれちゃいました。

 その後、少女を見つけた夫婦の行動も、あまりに間抜けで見ていてイライラしてしまったり。計画性がなく、すぐにバレてしまうような行動をとってしまうし、奥さんが警察や病院に連絡しようとすらしない理由もわからなかったです。子どもを家に閉じ込めておくにしても、拘束するでもなく、ただ部屋にいさせているだけというのも不自然すぎて、段々とストーリー展開に入り込めなくなっていきました。

 とはいえ、真昼間に現れる幽霊というのはやっぱり怖かったですし。暗闇に潜む怖さではなく、日常の中に潜んでいる気配の恐ろしさ。明るいはずの時間帯でも気を抜けなくなるあの感覚にはゾクッとさせられる1本でした。

☆☆☆

鑑賞日:2011/08/02 DVD

監督黒沢清 
脚色大石哲也 
黒沢清 
原作マーク・マクシェーン 
出演役所広司 
風吹ジュン 
きたろう 
草なぎ剛 
石田ひかり 
岸部一徳 
大杉漣 
哀川翔 
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