映画【桐島、部活やめるってよ】感想(ネタバレ):桐島がいなくなるだけで世界が揺れる

kirishima
スポンサーリンク

●こんなお話

 桐島が部活やめる話。

●感想

 物語は金曜日。女子生徒たちの日常、吹奏楽部の部長、映画部でゾンビ映画を撮っている生徒たち、野球部を辞めて先輩に声をかけられる生徒、バレー部。そんな中、学校のスター的存在である桐島が、突然バレー部を辞めるという噂が流れはじめる。

 桐島が何の前触れもなく部活を辞める金曜日から、少しずつ、生徒たちの日常が揺れ始める。「桐島、部活やめるってよ」という一言が、学校という小さな社会に波紋を広げ、それぞれの視点から変化していく世界を描いていきます。

 映画は少し引いた視点で、心地よい距離感のカメラワークを使いながら、生徒たちの感情やすれ違いを丁寧に追っていく。物語の前半、特に金曜日の時間がたっぷりと描かれることで、登場人物たちの関係性がじわじわと浮き彫りになっていくのが面白いです。

 桐島が辞めたことをきっかけに、様々な立場の生徒たちが動揺する。バレー部では、彼がいれば勝てると思っていたエース不在のプレッシャーに直面し、代わりに出場するリベロの男の子は努力しても追いつけない現実に苦しみ、自己嫌悪に陥る。

 桐島の彼女である学年一の美少女は、突然連絡が取れなくなった桐島に対して、自分の存在意義を見直さざるを得なくなる。その友人グループも、バレー部の男子に対する態度を通じて、だんだんギクシャクしていく。

 吹奏楽部の女の子は、放課後に桐島を待っている間に見ていたバスケ部の男の子への片思いを密かに楽しみにしていたが、桐島がいなくなったことで放課後のルーティンが崩れ、彼を見る機会も失われてしまう。

 そんな中で、桐島とまったく接点がない映画部の部長が、実はこの映画の隠れた主役。ゾンビ映画の撮影のために校内を駆け回る映画部のメンバーたちは、知らず知らずのうちに、桐島の不在に振り回される周囲の人間たちに影響を与えていく。

 バドミントン部の女の子に片思いしている映画部の部長が、映画館で偶然出会う場面にはグッときた。一緒に映画を観るその時間は、彼にとってかけがえのない瞬間で、まるで夢みたいな出来事。でも、その後の展開には思わず胸が締め付けられました。

 そして迎えるクライマックスは、火曜日の学校の屋上。吹奏楽部の演奏が鳴り響く中で、ゾンビ映画の撮影と、桐島を追ってきたバレー部や帰宅部、女子グループが集結し、思いがぶつかり合う。学生たちの不安や悩み、そして希望が、映画部のカメラ越しに一気に噴き出すような映像は圧巻。まさに映画的な美しさとエネルギーにあふれていました。

 登場人物が多く、それぞれの抱える悩みや葛藤をしっかり描き分けている脚本は本当に見事でした。青春という一瞬のきらめきと不安定さを、ここまで繊細に、そして大胆に描ける作品はそう多くないと思いました。

 個人的には、夕暮れのクライマックスの後、エピローグが少し長く感じた部分もあったけれど、それでも間違いなく面白い青春映画だと思いました。

☆☆☆☆

鑑賞日:2012/08/20 立川 CINEMA CITY/TWO 2016/05/07 Hulu 2023/11/22 Hulu

監督吉田大八 
脚本喜安浩平 
吉田大八 
原作朝井リョウ
出演神木隆之介 
橋本愛 
大後寿々花 
東出昌大 
清水くるみ 
山本美月 
松岡茉優 
落合モトキ 
浅香航大 
前野朋哉 
タイトルとURLをコピーしました