●こんなお話
寝ると東京の男の子と岐阜の田舎の女の子が「おれがあいつであいつがおれで」な体と心が入れ替わっていろいろある話。
●感想
さすが新海誠監督作品らしく、映像の美しさはやっぱり印象的でした。特に駅の風景や都会のビル群、空の描写などは見惚れるレベル。ただ、それがあまりにも見覚えのある美しさで、【秒速5センチメートル】や【言の葉の庭】など、過去作ですでに目にしたものばかりという印象もあって、新鮮さには欠けてしまう印象がありました。
物語の序盤は、身体が入れ替わるというSF設定のもと、男女のカルチャーギャップを描いたドタバタコメディ風な展開。だけど、その“入れ替わりあるある”を掘り下げることもなく、意外とあっさり状況を受け入れて、まるで日常のように順応していくキャラクターたちが不思議に感じます。途中からは、【イルマーレ】のような時間差のある手紙のやりとり、さらに後半には【ファイナル・ディスティネーション】のような“未来を変えようとする”タイムリミット型の展開になるが、どれも緊張感がやや弱く、感情の盛り上がりに欠けていたようにも。
特に違和感だったのが、街が消滅したという大事件を、なぜ主人公だけが知らなかったのかという点。さらに、ヒロインの超常現象的な話をあっさり信じて、変電所を爆破するという同級生たちの行動にもリアリティがなかったと思います。しかも、最終的にヒロインたちの行動は直接的に成功しないまま終わってしまい、時間が飛んだエピローグで「避難訓練で助かりました」というような展開になるのも肩透かしでした。
避難訓練って夜にやるものなのか?など、SFとしてのディテールも気になってしまって、物語にうまく乗れなかったり。ラストの電車のすれ違い──総武線と中央線快速という都内の設定も身近なのに、感情的に揺さぶられることはなかったです。
夢から覚めると互いの記憶が消えるという設定も、なんとなくそれっぽいロマンチックな要素として処理されていて、深掘りされずじまいで。いろんな要素が詰め込まれているけど、それが有機的に絡み合っていない印象でした。
単純に“その場の映像と音楽の雰囲気”を楽しむエンタメ作品として見るにしても、やや冗長でテンポが悪く感じられ、何度も流れる主題歌に途中から少しうんざりしてしまったのも正直なところある1作でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/08/31 チネチッタ川崎 2018/09/18 Blu-ray
監督 | 新海誠 |
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脚本 | 新海誠 |
原作 | 新海誠 |
出演(声) | 神木隆之介 |
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上白石萌音 | |
成田凌 | |
悠木碧 | |
島崎信長 | |
石川界人 | |
谷花音 | |
長澤まさみ |
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