●こんなお話
大統領狙撃事件をいろんな視点で追いかけた話。
●感想
スペインの古都サラマンカでテロ撲滅サミットが開催され、アメリカ大統領アシュトンが歴史ある大広場で演説を行う場面から物語は始まる。テレビ局GNNによる生中継の最中、突然大統領が狙撃され、ほぼ同時に広場で爆発が発生し、現場は一瞬で混乱に包まれる。
物語はこの出来事を起点に、約23分間の同じ時間を何度も巻き戻しながら、異なる人物の視点から描かれていく。最初に提示されるのは報道側の視点で、生中継映像には逃げ惑う群衆や断片的な情報だけが映し出され、事件の真相はまったく見えてこない。
続いて描かれるのは、シークレット・サービスのベテラン捜査官トーマス・バーンズの視点で、彼は過去に大統領を守る任務で重傷を負い、現場復帰したばかりだった。警護に就く中で彼は演説会場の一角に微かな違和感を覚え、不審なカーテンの揺れを部下に確認させていたことが明らかになる。
さらに、観光でサラマンカを訪れていたアメリカ人ハワード・ルイスの視点が加わり、彼が偶然撮影していたビデオ映像から、狙撃犯の位置や爆発のタイミング、現場に潜んでいた不審な人物の存在が徐々に浮かび上がっていく。
スペイン人警官エンリケの視点では、恋人のベロニカとともに事件に巻き込まれていく様子が描かれ、やがてベロニカがテロリスト側の一員であることが判明する。視点が重なり合うことで、狙撃と爆発は大統領暗殺ではなく拉致を目的とした陽動作戦であり、シークレット・サービス内部の協力者ケント・テイラーが計画に関与していたこと、狙撃手ハビエルは弟を人質に取られ脅されていたことが明らかになる。
首謀者スアレスとベロニカは大統領を救急車に乗せて拉致し逃走を図るが、バーンズは観光客の映像を手がかりに真相へと迫り、救急車を追跡する。銃撃戦と激しいカーチェイスの末、エンリケは逃走中のハビエルに撃たれて命を落とし、ハビエルとテイラーも死亡する。最終的に大統領が救急車内で生存していることが判明し、バーンズが現場でスアレスを射殺して大統領を救出し、事件はおしまい。
本作は、一つのテロ事件を複数の人物の視点で繰り返し描くという手法が非常に印象的な映画でした。各チャプターが比較的短く構成されており、必ずすべてを明かさないまま次へ進むため、自然と続きが気になる作りになっていた点はとても魅力的に感じました。
一方で、同じ時間帯を何度も見返す構成のため、物語の盛り上がりが一度リセットされてしまう感覚もあり、感情の高まりが持続しにくい部分があることも事実です。その点は演出として興味深く、同時に構成の難しさも伝わってきました。
終盤では事件の全体像が一気に明かされ、解決までの流れがカーチェイス中心で描かれますが、この部分はやや長く感じられ、新たな情報が少ないため緊張感が薄れてしまった印象もあります。前半で登場した人物が次々と命を落としていく展開も、感情移入の余地が少ないため、淡々と受け止めてしまいました。
斬新な構成とアイデアには強い魅力があり、視点の切り替えという実験的な試みは十分に楽しめました。もう一段階踏み込んだ人物描写や意外性が加わっていれば、さらに印象に残る作品になったのではないかと感じる1作でした。
☆☆☆
鑑賞日:2008/08/19 Blu-ray 2025/12/26 U-NEXT
| 監督 | ピート・トラヴィス |
|---|---|
| 脚本 | バリー・L・レヴィ |
| 出演 | デニス・クエイド |
|---|---|
| マシュー・フォックス | |
| フォレスト・ウィテカー | |
| シガニー・ウィーヴァー | |
| ウィリアム・ハート |


