●こんなお話
大分は湯平温泉で出会った若者たちの恋の仲介役をやる寅さんの話。
●感想
ブルックリンでスケコマシのジュリーと対決する寅次郎の夢から始まる。威勢よく啖呵を切るが、場面は一転し、葛飾柴又のとらやへと帰ってくる寅次郎の姿が映し出される。久しぶりの帰郷に、さくら、博、おいちゃん、おばちゃんはいつものように迎え入れる。しかし些細なことから口論になり、今回はマツタケをめぐる言い争いがきっかけで感情を爆発させ、とらやを飛び出してしまう。
行き着いた先は大分県の湯平温泉。湯平荘に宿を取った寅次郎は、宿の親父と酒を酌み交わしながら旅の夜を過ごす。そこに同宿していたのが、東京のデパートに勤める螢子と、動物園でチンパンジーの飼育係として働く青年・三郎である。三郎は亡き母の遺骨をこの地に納めるために訪れており、実直で無口な性格の持ち主だ。
螢子は陽気で世話焼きな寅次郎に興味を示す一方、整った容姿ながら感情表現の乏しい三郎に対しては距離を置いている。寅次郎は二人を酒席で引き合わせ、三郎の身の上話を自然に語らせる。母を失った悲しみと、仕事に打ち込む日々を淡々と語る三郎の姿に、螢子は少しずつ心を動かされる。
やがて東京へ戻る日が来ると、三郎は思い切って螢子に交際を申し込む。しかし緊張のあまり言葉がぎこちなく、螢子は即答を避ける。寅次郎はその様子を見て三郎の背中を押す役目を買って出る。三郎の純情さを評価し、自ら恋愛指南役となることを決める。螢子を柴又のとらやに招き、三郎も東京へ呼び寄せる。
柴又で再会した三人は、とらやの座敷で食事を囲む。三郎は緊張しながらも螢子と向き合い、仕事の話や母との思い出を語る。螢子は「二枚目すぎる」と冗談めかしつつも、三郎の真面目さに触れることで印象を改めていく。寅次郎は「男は度胸だ」と三郎に言い、自信を持って想いを伝えるよう励ます。
三郎は再び螢子に気持ちを告げる。今度ははっきりとした言葉で将来を見据えた交際を望んでいることを伝える。螢子はその誠実さを受け止め、二人は正式に付き合うことになる。寅次郎は二人の様子を見届け、自分が入り込む余地がないことを悟る。
とらやでは祝福ムードが広がるが、寅次郎は再び旅に出る決意を固める。家族に別れを告げ、旅に出ておしまい。
シリーズおなじみの型を踏襲しながらも、湯平温泉という情緒ある舞台が物語に柔らかな色合いを添えており、安心感と新鮮さが同居した一作だと感じました。些細なことで喧嘩をして柴又を飛び出し、旅先で出会った若者の恋に首を突っ込み、最終的には身を引いて再び旅に出る。この繰り返しが寅さんらしさの核であり、その変わらなさが心地よいリズムを生み出しています。
沢田研二さん演じる三郎の好青年ぶりも印象的です。派手さはないものの、母の遺骨を抱えて温泉地を訪れる姿には静かな覚悟があり、その真面目さが画面越しにも伝わってまいります。寅次郎の豪放さと対照的な存在として、物語に奥行きを与えていました。
また、寅次郎が恋心を抱きながらも仲立ち役に徹する展開は、シリーズの魅力を端的に示しています。自分の感情よりも若い二人の未来を優先する姿勢には、滑稽さの奥にある優しさがにじみ出ています。笑いと人情が自然に溶け合う構成は、改めて山田洋次作品の巧みさを感じさせます。
全体として、定番の展開を楽しみながら、若い男女の恋模様と家族の温もりを味わえる作品でした。寅さんという存在の包容力を再確認できる一作です。
☆☆☆
鑑賞日:2026/02/20 U-NEXT
| 監督 | 山田洋次 |
|---|---|
| 脚本 | 山田洋次 |
| 朝間義隆 | |
| 原作 | 山田洋次 |
| 出演 | 渥美清 |
|---|---|
| 倍賞千恵子 | |
| 田中裕子 | |
| 沢田研二 | |
| 下絛正巳 | |
| 三崎千恵子 | |
| 前田吟 | |
| 太宰久雄 | |
| 佐藤蛾次郎 | |
| 吉岡秀隆 | |
| 笠智衆 | |
| 朝丘雪路 | |
| 人見明 | |
| 児島美ゆき | |
| 内田朝雄 | |
| 殿山泰司 | |
| 高城美輝 | |
| アパッチけん | |
| 光石研 | |
| 笠井一彦 | |
| SKD |

