映画【炎の大捜査線】感想(ネタバレ):刑務所アクションと人間ドラマの融合

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●こんなお話

 いろんな事情で酷い刑務所に入って死刑囚になってしまう人たちの話。

●感想

 サモ・ハン、ジャッキー・チェン、アンディ・ラウ、レオン・カーファイという豪華な顔ぶれが揃った香港映画。物語の舞台は刑務所。閉ざされた鉄格子の向こうに広がるのは、看守の暴力、囚人たちの諍い、そして脱獄劇という、いかにも「刑務所もの」としての定石が詰め込まれた世界。開始からこのジャンルの王道をなぞるような展開に、「これは期待できそうだな」と思わせてくれる雰囲気があるのですが、なぜか終始淡々としたテンションで物語が進んでいきます。

 レオン・カーファイ演じる刑事は、恋人の父親が殺された事件の真相を探るため、敢えて罪を犯して服役するという設定。あくまで“潜入”として刑務所に入っている彼の立場は、本来であればスリル満点の潜入捜査劇が展開されるはずなのですが、あまりその切迫感が描かれず、さらっと話が流れてしまいます。

 一方、サモ・ハンの役柄は、息子に会うために何度も脱獄を試みるという情に厚い父親像。こちらはアクションも交えつつの熱演で、存在感は抜群でした。ただ、彼が何度も脱獄を繰り返すたびに、刑務所の警備のゆるさが浮き彫りになってくるのが面白いところ。鉄格子があるわりにはずいぶんと人の出入りが自由で、看守たちの反応もどこかのんびりしていて、そこがまた味わい深くもあります。

 ジャッキー・チェンは、八百長試合を拒んだことで命を狙われ、恋人にまで危害が及び、やむなく事件を起こしてしまうという役柄。過去のしがらみや愛情が彼を追い詰めていく中で、いつもとは少し違ったシリアスな表情を見せてくれます。そして、彼が殺したのがアンディ・ラウの弟という設定で、アンディ・ラウはその復讐のために刑務所に入ってくるというドラマが重なっていきます。豪華キャストがそれぞれの背景を背負いながら同じ場所に集まり、時にぶつかり合い、時に手を組むような群像劇の展開には、複数の物語が絡み合っていく面白さがありました。

 ただ、全体的に演出が単調に感じられ、音楽も場面を問わず同じトーンで流れ続けるため、やや緊張感に欠ける印象も否めませんでした。刑務所内の人物関係も、例えば親分格のジミー・ウォングが看守とどういう関係にあるのかがあまり明かされず、存在感のあるキャラクターではあるのですが、力関係の描写が曖昧なままでした。周囲を仕切っている割には看守たちに従っていたりと、彼のポジションの立ち位置がよくわからず、不思議なバランスで成り立っていました。

 そして物語が急転するのが、主要キャラクターたちが死刑を宣告されたのち、東南アジアの要人暗殺を命じられるくだり。ここからアクションが一気に本格化するのですが、これまでの刑務所生活とはガラリとトーンが変わる展開で、やや唐突な印象も受けました。もう少しこの暗殺計画に至るまでの道のりを丁寧に描いてもらえると、物語としての高まりが増したように思います。

 とはいえ、ジャッキー・チェンとアンディ・ラウがスクリーンで対峙するシーンはやはり見応えがあり、俳優陣の持つスター性が作品をしっかりと支えているのを感じました。ラストには明るいNG集が流れ、ストーリーとのギャップにちょっと戸惑いながらも、香港映画らしい余韻が残りました。

 この作品は、豪華キャストを揃えた刑務所アクションのなかで、それぞれのキャラクターが持つ物語が折り重なりながら、予想外の方向へ展開していく作品でした。刑務所ものとしての定石に加え、潜入捜査や復讐、家族愛、そして壮大なミッションまで含んだ、なかなかに盛りだくさんな一本だったと思います。

☆☆

鑑賞日:2021/02/10 Amazon・プライム・ビデオ

監督チュ・イェン・ピン 
脚本フー・リー 
イェン・ユン・チャオ 
出演ジャッキー・チェン 
アンディ・ラウ 
サモ・ハン・キンポー 
レオン・カーファイ 
ジミー・ウォング 
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