映画【インサイド・ヘッド】感想(ネタバレ):頭の中の感情たちの冒険

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●こんなお話

 思春期の女の子の脳内の感情たちの話。

詳細ネタバレあらすじ

 ライリーはミネソタ州で両親と暮らす11歳の少女。父親がサンフランシスコで新しい仕事に就くことになり、家族は住み慣れたミネソタ州を離れて引っ越す。

 ライリーの頭の中には「司令部」と呼ばれる場所があり、ヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの5つの感情が暮らしている。5人は司令部にある操作盤を使い、ライリーの反応や行動に関わっている。ライリーが経験した出来事は色のついたボールとして記憶に保存され、そのなかでも特に重要な記憶は「コア・メモリー」と呼ばれる。コア・メモリーは、家族や友情、ホッケーなど、ライリーの人格を形作る「性格の島」を支えている。

 家族がサンフランシスコに到着すると、新居には引っ越し荷物がまだ届いていなかった。段ボール箱が積まれた家で新生活が始まり、父親は新しい仕事に追われる。翌日、ライリーは新しい学校へ通い始める。

 教室で自己紹介をすることになったライリーは、以前暮らしていたミネソタ州での生活について話す。ところが、カナシミが記憶のボールに触れると、その記憶が青く変化し、ライリーはクラスメートの前で泣き出してしまう。ヨロコビは青くなったコア・メモリーを取り除こうとするが、その拍子にほかのコア・メモリーまで司令部から飛び出してしまう。ヨロコビとカナシミはコア・メモリーとともに司令部の外へ運ばれ、長期記憶の保管場所へ流される。

 司令部にはイカリ、ムカムカ、ビビリの3人が残る。ヨロコビとカナシミが不在のなか、3人は操作盤を担当することになる。ライリーは新しい生活に戸惑い、家族との食事ではサンフランシスコのピザに使われているブロッコリーを嫌がる。父親とのやり取りでも反発し、家族の食卓には険悪な空気が流れる。

 一方、ヨロコビとカナシミは司令部へ戻る方法を探す。長期記憶の保管場所で、2人はライリーが幼いころに作り出した空想上の友達、ビンボンと出会う。ビンボンはヨロコビたちに協力し、思考や考えを司令部へ運ぶ「考えの列車」に乗るため、3人で移動を始める。

 途中で列車に乗り込んだ3人だったが、ライリーが眠ると列車も停止してしまう。そこで3人は、ライリーを目覚めさせるために夢を制作する施設「夢制作スタジオ」へ向かう。夢の撮影現場に入り込んだヨロコビたちは、ライリーが悪夢を見るように仕向ける。ライリーが目を覚ますと列車が再び動き出し、3人は司令部への帰還を目指す。

 そのころ、ライリーはアイスホッケーチームの入団テストを受ける。しかし、思うようにプレーできず、怒りをあらわにしてしまう。頭の中ではホッケーの島が崩れ落ち、ライリーの人格を支える性格の島にも変化が起き始める。

 司令部に残ったイカリは、ライリーがミネソタ州で暮らしていたころの生活を取り戻そうと考え、家出するという計画を立てる。ライリーは母親の財布からクレジットカードを抜き取り、ミネソタ州へ戻るバスの切符を購入する。家出の準備が進むにつれて性格の島が次々と崩壊し、ヨロコビたちが乗っていた考えの列車も脱線してしまう。ヨロコビとビンボンは長期記憶の保管場所から記憶のゴミ捨て場へ落下し、カナシミは司令部へ戻る道を探し続ける。

 記憶のゴミ捨て場で、ヨロコビはライリーがホッケーの試合に負けたときの記憶を見つける。試合に負けたライリーは泣いていたが、両親やチームの仲間たちが彼女のそばに集まり、慰めていた。その後、ライリーは両親や仲間と一緒に笑顔を取り戻す。ヨロコビはこの記憶を通して、悲しい出来事のあとに家族や仲間がライリーを支えていたことを知る。

 ヨロコビとビンボンは、ビンボンが持っていたロケット型の手押し車を使い、記憶のゴミ捨て場から脱出しようとする。手押し車は歌の力で飛び上がるが、2人が乗ったままでは崖の上まで届かない。何度も挑戦した末、ビンボンはヨロコビだけを脱出させるために手押し車から降りる。ヨロコビは崖の上へ到達するが、ビンボンは記憶のゴミ捨て場に残り、やがて姿を消す。

 ヨロコビはカナシミを探し出し、2人で司令部へ戻る。そのころ、ライリーはすでにミネソタ州行きのバスに乗っていた。司令部ではイカリ、ムカムカ、ビビリがライリーの行動を制御しようとするものの、コア・メモリーが失われ、性格の島も崩壊しているため、操作盤は正常に機能しない。

 司令部に戻ったヨロコビは、自分で操作盤を動かそうとするのをやめ、カナシミに操作を任せる。ライリーはバスの中で涙を流し、途中でバスを降りて家へ戻る。帰宅したライリーは両親に、ミネソタ州で暮らしていた家や友達が恋しいと打ち明ける。両親はライリーを抱きしめ、自分たちも以前の生活を懐かしく思っていることを伝える。

 司令部では、ヨロコビとカナシミが協力して操作盤を動かす。新たなコア・メモリーには喜びと悲しみの両方が含まれ、性格の島も再構成されていく。

 それから1年後、ライリーはサンフランシスコで生活を続け、新しい友達と過ごしながらアイスホッケーにも取り組んでいる。司令部では5つの感情が協力して操作盤を使うようになり、ライリーの記憶には複数の感情が混ざるようになる。操作盤も以前より大きくなり、成長したライリーの変化に対応しておしまい。

●感想

 感情という目に見えないものを、ピクサーのアニメーションによって目に見える世界として描いていて、そのビジュアルの発想だけでも面白かったです。頭の中に司令部があり、そこで感情たちが操作盤を動かしているという設定からしてユニークですし、記憶が色のついたボールとして保管されていたり、人格を形作る性格の島があったりと、想像力を刺激される仕掛けが次々に登場します。

 特に、ヨロコビとカナシミが司令部を離れ、ライリーの頭の中を冒険する場面が印象に残りました。長期記憶の保管場所や夢制作スタジオなど、脳内の働きを独自の世界として表現するアイデアがすごいです。こうしたビジュアルをどのように考え、スタッフ同士で共有し、実際の映像として形にしていったのかも気になりました。設定を考えるだけでも大変そうですが、それを観客に伝わる映像へ落とし込んでいるところに、ピクサーの仕事の面白さを感じます。

 さすがはピクサーというべきか、上映時間は約95分とコンパクトで、物語が次々に展開していきます。設定を説明するだけで終わらず、ヨロコビとカナシミの冒険を通して、頭の中の世界を見せてくれるので、最後まで飽きずに楽しめました。ライリー以外の人物の頭の中にも感情たちがいるという描写も笑えます。自分とは違う考え方をする人の頭の中では、いったいどんなやり取りが行われているのか。そんな想像を膨らませられるところも面白かったです。

 ただ、個人的には主人公たちのキャラクターを好きになれなかったのが残念でした。なかでもヨロコビは、何があっても前向きで、ライリーを常に幸せにしようとするキャラクターです。その姿勢は物語を動かす原動力になっていますが、あまりにもポジティブな態度が続くため、見ていて少し疲れてしまいました。現実にこういう人が身近にいたら、こちらの気持ちを考えずに前向きな言葉を押しつけてくるように感じて、イライラしてしまうかもしれません。相手を励ましているつもりでも、受け取る側にとっては余計なお世話になってしまう。ヨロコビの振る舞いには、そんな印象を受けました。

 一緒に冒険するカナシミにも、なかなか好感を持てませんでした。何かをしようとするたびに周囲に影響を与え、ヨロコビの計画を妨げてしまうように見える場面が多く、見ていてもどかしさを感じます。もちろん、物語が進むにつれてカナシミの存在には別の意味が与えられますし、彼女がいるからこそ成立する展開もあります。それでも、そこにたどり着くまでの間、2人のキャラクターにあまり魅力を感じられなかったのは個人的に惜しいところでした。

 アニメーション作品では、登場人物に愛着を持てるかどうかも楽しさを左右すると思っています。映像や設定がどれほど魅力的でも、物語の中心にいるキャラクターを好きになれないと、気持ちが入り込みにくくなってしまいます。本作は頭の中の世界を描くアイデアや映像表現が素晴らしいだけに、ヨロコビとカナシミの冒険をもっと素直に楽しめたらよかったです。

 また、個人的にはディズニー作品ならではの、夢のある物語をもっと見たかったという気持ちもあります。感情を擬人化し、脳内の仕組みを冒険の舞台にする発想は魅力的ですし、アニメーションだからこそ実現できる表現にも感心しました。一方で、主人公たちに共感できなかったため、作品の持つ温かさや夢のある雰囲気を十分に味わえなかったのも正直なところです。

 独創的な設定と映像表現、テンポのよい展開は大いに楽しめましたが、キャラクターへの好みが分かれた作品でした。ピクサーらしい創造力に感心しつつも、物語の中心となるキャラクターを好きになれなかったことが、個人的には最後まで引っかかってしまう1作でした。

☆☆☆

鑑賞日: 2015/07/26 TOHOシネマズシャンテ 2026/10/20 Disney+

監督ピート・ドクター 
共同監督ロニー・デル・カルメン 
脚本ピート・ドクター 
メグ・レフォーヴ 
ジョシュ・クーリー 
出演(声) エイミー・ポーラー 
フィリス・スミス 
ルイス・ブラック 
ミンディ・カリング 
ビル・ヘイダー 
リチャード・キング 
ケイトリン・ディアス 
カイル・マクラクラン 
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