映画【インファナル・アフェアII 無間序曲】感想(ネタバレ):裏社会の知略と情熱──香港ノワールに生きる男たち

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●こんなお話

 前作の登場人物たちが香港返還前の時代にマフィアの跡目争いをする話。

●感想

 ウォン警視が昔の話を始める。先輩が殺されて、犯人を何発も撃ったのに殺しきれず、数年後にはその犯人が普通に生活していたという、やるせない出来事だった。その話を、香港裏社会の一角を担う男・サムに静かに語っていた。

 その香港では、裏社会の大ボスであるクワンが殺され、誰がやったのかという話になる。子分のボスたちは、これを機に上納金の取り立てをやめてしまおうかと目論み始める。しかし、そこに現れたのがクワンの次男・ハウ。跡目を継いだ彼は、他のボスたちの弱みを巧みに握り、脅しを使って彼らを次々と従わせていく。

 警察も黙って見ているわけにはいかず、ウォン警視は自分の部下を裏社会に、サムは自分の子分を警察に、それぞれ潜入させて情報を集め始める。潜入捜査官のヤンは、任務のなかでサムの妻に心を動かされる。

 やがてクワン殺害の犯人が判明する。それはサムの妻であり、その背後で糸を引いていたのはウォン警視だった。監視カメラの映像が証拠として提出され、ウォン警視は謹慎処分となる。ハウは勢力を拡大し、邪魔者となるボスたちを次々に排除。サムにも魔の手が迫るが、妻からの連絡で間一髪、命を拾う。

 その後、ウォン警視は古い友人に誘われ外へ出るが、車が爆破され、友人は命を落とす。サムはタイへと逃れ、しばらくの間、身を隠す。

 だが、すべては終わっていなかった。サムはウォン警視の助けを借りて再び香港に舞い戻る。そして、ついにハウと対峙する。ハウは、サムの家族を人質に取ろうと画策するが、実はその“家族”はただのお手伝いさん。逆にハウの家族がサムに捕らえられていた。

 激昂したハウが銃を向けた瞬間、警察が突入し、ウォン警視の放った一発がすべてを終わらせる。結果として、サムの一人勝ちとなっておしまい。

 渋いおじさんたちの顔が画面を占める映画でして、派手なアクションよりも、目つきや無言のアップに気持ちがにじみ出るのがたまりませんでした。特に、大声で叫ぶわけでもないのに、画面越しに伝わる焦燥や葛藤がじわじわと心に響いてきまして、観ていて思わず息を呑む場面が何度もありました。

 物語は、裏社会のボスが殺されたことをきっかけに、跡目争いや報復の連鎖が始まっていくという、ある意味王道ともいえる展開ですが、それが香港ノワールらしい湿った空気の中で描かれていて、非常に味わい深かったです。警察とマフィア、それぞれがスパイを潜入させて知恵を絞り合う頭脳戦も見どころで、銃や暴力だけではない静かな緊張感が続いていくのも魅力的でした。

 仰々しい音楽に合わせてスローモーションになる場面が少し多い印象はありましたが、ああいった演出もこのジャンルのお約束として楽しむことができました。笑っていても心では泣いている、というような裏社会の虚しさや、矛盾した人間関係に何とも言えない哀しさがにじんでいて、観ているこちらの胸も静かに痛むような、そんな余韻がありました。

 主人公のヤンが、かつて兄貴分を殺されたはずのサムに仕えているという設定には少し疑問も浮かびましたが、そこも含めて「潜入捜査官としての生き様」を描いたものとして観ると、また違った見え方もありました。そういった細かい部分に目を向けると、いろいろ考えさせられる映画でもありました。

 直球で濃密なマフィア映画として、しっかりと2時間堪能できた一作でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日: 2016/04/29 NETFLIX 2023/10/11 U-NEXT

監督アンドリュー・ラウ 
アラン・マック 
脚本アラン・マック 
フェリックス・チョン 
出演エディソン・チャン 
ショーン・ユー 
アンソニー・ウォン 
エリック・ツァン 
カリーナ・ラウ 
フランシス・ン 
フー・ジュン 
チャップマン・トウ 

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