●こんなお話
ボストンで麻薬捜査をしている主人公の刑事たちが不法移民の手に渡った事件の黒幕が映っているフィルムを巡って、悪人とクンフーアクションの話。
●感想
登場人物が顔を合わせた瞬間にすぐファイトシーンが始まる。そんなシンプルかつ直球な設計に驚かされます。導入もほとんど助走なしで、いきなり殴る、蹴る、飛ぶ、投げる。とにかくアクションで物語を語ろうという気概に満ちた作品でした。
舞台はボストン。書類もなく街の片隅で働く一人の不法移民の中年男性。掃除夫のような仕事をしながら、目立たないように生きていたその男が、ある日、ひょんなことから女刑事と出会う。最初はぎこちなくも、なんとなく生活のにおいが漂うようなやりとりが交わされていたのに、次の瞬間にはもう戦っている。しかも、その戦いぶりがとんでもないという。ボロボロの作業着をまとっていた男が、手すりを飛び越え、壁を走り、敵を翻弄する。その変貌ぶりがあまりに鮮やかで、目が離せなくなりました。
ひとつひとつのアクションシーンが粒立っていて、まるで各バトルが独立した短編映画のように組まれています。お話自体は非常にシンプル。不法移民の男が、瀕死の刑事から何かの秘密が詰まったフィルムを託され、それを巡って悪人と警察の双方に追われるという展開。まさに「逃げて、戦って、隠れて、また戦う」の連続で、そのテンポ感がとにかく気持ちいいです。
刑事役で登場するドニー・イエンは、容赦のない暴力刑事として登場。容疑者には即ビンタ、取り調べでは大声で恫喝。どう考えても法を逸脱しているやり口で自白を引き出そうとするその姿は、ほぼギャグの領域。冷静に考えれば問題行動のオンパレードですが、画面の中では不思議と成り立っていて、妙なリアリティすら感じさせます。とはいえ、その強引さゆえに、キャラクターに感情移入するのはやや難しいところでもあったり。
とはいえ、そんな理屈も吹き飛ばすほど、アクションの密度が高くて。狭い階段での肉弾戦、厨房でのナイフを使った応酬、車を駆使したチェイスなど、とにかく場面ごとに趣向が凝らされていて、飽きさせないです。アクションを仕掛ける側も受ける側もキレがあって、悪役たちの動きがまた素晴らしく。単なるやられ役ではなく、どの人物にも戦う身体の説得力があって、見ていて嬉しくなったです。
95分という短めの上映時間の中に、アクションの美味しいところがギュッと詰め込まれていて、満足度は高かったです。物語の細かい整合性を気にするよりも、動きそのものに酔うべき作品というか、1本の映画でここまでバリエーション豊かに戦ってくれるのは貴重だと感じました。何も考えずに、ただ殴り合う姿を見つめていたくなる、そんな映画でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2015/01/04 Hulu
監督 | ユエン・ウーピン |
---|
出演 | ドニー・イェン |
---|---|
シンシア・カーン | |
マイケル・ウォン |