●こんなお話
ヤクザの銃密売のいざこざに巻き込まれる男の話で、クセのある登場人物たちがお経のような音楽が流れる中で銃撃戦をする話。
●感想
主人公は、旧友から突然の再会の誘いを受けて軽く雑談でも、というような空気で顔を合わせることになります。何気ない会話のはずが、その友人が突如人を殺害し、驚く間もなく目の前には横たわる遺体。状況が飲み込めないまま、友人に遺体の処理を手伝ってくれと頼まれ、半ば流されるようなかたちで2人はダムに沈む予定の廃墟へと向かいます。
途中、地元の警官に職務質問されてしまい、このままバレて逮捕かとヒヤリとする場面も。しかしトランクに入っていたはずの遺体は忽然と消えており、予想外の展開に動揺しつつ、友人の後を追って再び廃墟へ。そこは何やら怪しい取引が行われる場所でもあり、意識を取り戻した男が現れたかと思えば、あっという間に銃撃戦が始まり混乱の渦へと巻き込まれていきます。
主人公は幼い子どもに会いたいという気持ちを胸に、逃げ出そうとしますが、そこへ組織の助っ人も加わり、戦闘は激しさを増していきます。ヤクザの幹部のような男まで登場し、さらに銃撃戦。やがて、草原に舞台を移し、主人公と標的となる男との一騎打ちが展開され、壮絶な戦いの末に勝利。しかし、友人はすでに傷を負い、力尽きるというエンディングでした。
全体が50分という中編のため、物語の展開は早く、勢いで見せる構成になっていますが、その分、主人公の背景や行動の動機がやや分かりにくく感じられる部分もありました。中盤で「もう嫌だ」と逃げ出した主人公が、なぜか再び戻ってきて、しかも急に銃の扱いに長けた男として活躍を始めるのは、やや強引に感じられました。
また、物語の世界観や登場人物たちの関係性もやや不透明で、序盤で説明されたであろう因縁や立場の情報も、やや飲み込みづらい印象を受けました。ヤクザ同士が唐突に殺し合いを始めたり、菅田俊さん演じるボスキャラのような存在が、無言で何度撃たれても立ち上がるというターミネーター的な演出も興味深い一方で、その理由が描かれていないため、独特の世界観に観る側がどこまでついていけるかという部分はあったかと思います。
泉谷しげるさんが演じるキャラクターも、敵味方問わず周囲を倒していくという不思議な動きで、ストーリーラインにどう関わっているのか判断が難しいところでした。
それでもこの作品が向かっている方向は、おそらくごちゃごちゃ理屈を説明するよりも、カッコいい銃撃戦を見せるということに重きを置いたアクションの快作であるように感じました。渡部篤郎さんが徹頭徹尾クールに撮られていて、その存在感とビジュアルが作品を引っ張っていたと思います。全編を彩る音楽も印象的で、作品のトーンをしっかりと固める重要な要素になっていたと感じました。
一方で、警官とヤクザのやり取りが急にコミカルになる場面があり、作品の空気から少し浮いてしまったように感じたのは正直なところです。ただ、それも含めて、50分という時間でアクションとキャラクターを詰め込んだ、テンポ感のある映画だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日:2013/06/27 DVD 2023/12/17 DVD
監督 | 北村龍平 |
---|---|
脚本 | 北村龍平 |
出演 | 渡部篤郎 |
---|---|
鈴木一真 | |
泉谷しげる |