●こんなお話
公儀介錯人の主人公が柳生一族の陰謀で追われる身となって、立ち寄った宿場町で悪人と対峙する話。
●感想
物語は、小さなお殿様を家臣たちが涙ながらに見送るシーンから始まる。その直後、公儀介錯人である主人公・拝一刀が、その幼い命を確かに絶つという衝撃の幕開け。江戸幕府の裏で暗躍する役目――公儀介錯人。その役割を担う拝一刀は、柳生一族の陰謀により濡れ衣を着せられ、公職を追われてしまう。
主人公は刺客として送り込まれた柳生の武士たちを返り討ちにし、幼い息子・大五郎とともに果てしない旅へ出る。物語の要所要所で、親子の静かで強い絆が垣間見えます。たとえば、気が狂った女性が現れて大五郎に乳を与えようとする場面。父の表情を見て空気を察した大五郎が、無言でその女性を受け入れ、心を落ち着かせてやるというシーンには、台詞は少ないながらも深い人間ドラマを感じたり。
旅の途中で立ち寄った宿場町では、殿様暗殺を企む侍と無頼者たちが密談し、町の人々を脅して支配していた。主人公は最初、無頼者たちに侮られ、大五郎を殺すぞと脅される。さらにその場で「この女を抱けば許してやる」と迫られ、主人公は逆らわず女性を抱く。町の住民はそんな主人公に失望するが、抱かれた女性が「みんなを守るためだった」と語り、拝一刀の行動に敬意を示すことで空気が変わる。
そして迎える暗殺決行の日。町を出ていく際の見せしめとして住民を何人か殺そうとする無頼者たちに対し、ついに主人公が立ち上がる。大五郎の乳母車には巨大な斬馬刀が仕込まれており、それを取り出して敵を次々に斬り倒す。短筒を構える侍も、頭ごと斬られ、血しぶき舞う中での見事な殺陣が展開されます。
乳母車を押して、静かに宿場町を去る親子の背中が印象的なエンディング。全体的にスケールは小さく、ストーリーも宿場町での小悪党との戦いと、回想による過去の描写が中心です。しかし、若山富三郎の重厚でキレのある殺陣を存分に楽しめる作品でした。とくにクライマックスの槍を使ったシーンは圧巻で、テンションが一気に上がるものでした。
手足や首が斬られる描写もあり、時代劇ならではのバイオレンスが程よく味わえます。内容自体はシンプルだがテンポが良く、最後まで飽きずに見られて。敵役が拝一刀の正体を知り、「拝む…介錯…介錯人、拝一刀!」と怯えるシーンはちょっとしたユーモアもあって、シリアスな中に笑いを忘れないのも魅力の1作でした。
☆☆☆☆
鑑賞日:2009/01/13 DVD 2023/08/18 DVD
監督 | 三隅研次 |
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脚本 | 小池一雄 |
原作 | 小池一雄 |
小島剛夕 |
出演 | 若山富三郎 |
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渡辺文雄 | |
露口茂 | |
内田朝雄 | |
加藤嘉 | |
内藤武敏 | |
真山知子 | |
富川晶宏 | |
藤田佳子 | |
笠原玲子 | |
関山耕司 | |
松山照夫 | |
伊達三郎 | |
波田久夫 | |
守田学 | |
和田俊也 | |
伊藤雄之助 |