映画【ごくつま刑事】感想(ネタバレ):極妻、潜入捜査官になる

gokutumadeka
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●こんなお話

 高級クラブのママが刑事となって捜査する話。

●感想

 元極道の妻が潜入捜査官になるという設定がまずユニークで、冒頭からその世界観に引き込まれるつくりになっていました。表の顔は専業主婦ながら、裏では情報網を駆使して麻薬組織に迫っていく展開は、思わず先が気になってしまいます。とくに子分たちが非常に優秀で、彼らが動き始めると物語に一気にテンポが生まれていきます。

 ただし、そんな彼らに比べると主人公本人の活躍がやや薄く映ってしまう部分もあり、そこは少し物足りなさを覚えました。物語全体では彼女が捜査に命をかけるような勢いで動いていくのですが、その動機となる内面の描写がややぼんやりしていて、なぜそこまでの行動を取るのかが掴みにくかった印象もありました。旦那のために動いているという筋はあるのですが、それ以上の感情や背景が描かれていないので、彼女の熱量が空回りしているようにも見えてしまいます。

 中盤では、敵対する組織のアジトに1人で乗り込んで啖呵を切るという見せ場が用意されており、背中の刺青がばっとあらわになるカットは象徴的で、演出的にも見せ場だったと思います。ただ、セリフやテンポの面で少し迫力に欠けてしまっていて、緊張感というよりも思わず笑ってしまいそうな空気が流れてしまったのが惜しかったです。

 物語の進行そのものは非常にシンプルで、事件が順々に起きて、それを周囲のキャラクターたちが解決に向けて奔走していく流れになっています。ただ、その過程で主人公自身に深い悩みや葛藤といったものがあまり描かれておらず、むしろ周囲の人間が苦悩しているのに、主人公はそこに無頓着なまま突き進んでしまうようにも見えたのは少し残念でした。

 演出面では、カメラのブレが非常に多く、台詞の内容が頭に入りにくく感じてしまった場面が何度かありました。手持ちカメラの効果を狙った演出なのかもしれませんが、人物の感情や表情が伝わりづらくなってしまっていて、臨場感よりも見づらさのほうが勝っていた印象でした。

 とはいえ、極道と捜査官という二重構造を持ったヒロインの立ち位置や、テンポよく進む事件の展開、脇を固めるキャラクターたちの存在感など、見どころも多い一本だったと思います。もう少し人物の心情や関係性に厚みが加われば、さらに面白くなっていたと思います。

☆☆

鑑賞日:2012/08/02 DVD

監督横井健司 
脚本堀内靖博 
原作香川まさひと
和気一作
出演松本莉緒 
真木蔵人 
加藤慶祐 
袴田吉彦 
螢雪次朗 
中村橋之助 
村野武範 
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