●こんなお話
世界子どもランドというテーマパークでの仕事にありついた売れない漫画家が地球制服を狙う宇宙人との戦いに巻き込まれていく話。
●感想
ガイガンの鋭利で機械的なデザインがひときわ目を引く本作は、その造形美だけでも特撮ファンの心を惹きつけてやまない作品です。ギラギラとした金属の質感や赤く光る目など、細部にまでこだわったその姿は、登場するだけで画面の空気を支配するほどの存在感を放ちます。そんなガイガンが、街を破壊し、ゴジラやアンギラスと対峙する場面はまさに怪獣映画の真骨頂。ゴジラたちが流血し、傷を負いながらも戦い抜く姿は、怪獣映画ながらどこかヒロイックな熱さを感じさせます。
主人公が漫画家という設定もユニークで、物語の舞台となる「世界子どもランド」もまた風変わりな雰囲気を醸し出しています。一見のどかなテーマパークのようでいて、その実、裏では宇宙人が暗躍しており、平和な風景の裏にひそむ陰謀が徐々に明らかになっていきます。主人公がその従業員たちの正体を見破り、宇宙人との直接対決へと発展していく展開は、特撮ならではのワクワク感に満ちています。
なかでも印象的だったのが、ゴジラタワーの破壊シーン。爆発物をエレベーターに仕掛け、その扉の前に絵を描いて相手を欺くという発想は、あまりに突飛で一種のシュールさすら感じさせます。勢いと発想の勝負ともいえるこのシーンは、真剣さとユーモアが絶妙に入り混じる名場面でした。
主人公の相棒として登場する女性キャラクターも強烈な印象を残します。ひょんな偶然から宇宙人の企みに巻き込まれ、彼らに襲われそうになる場面では、突然帰宅した女性が宇宙人に真正面から殴りかかるという展開に。その潔さと迫力に、思わず見入ってしまいます。物語が進むにつれ、彼女の活躍ぶりも増していき、物語の推進力となっていきます。
怪獣たちの戦いももちろん見逃せません。ゴジラとアンギラスがタッグを組み、ガイガンとキングギドラに挑む怪獣プロレスのクライマックスは、まさに映画全体の盛り上がりが最高潮に達する場面です。それぞれの怪獣が持つ個性が存分に活かされた動きとアクションの応酬は、スクリーン越しに手に汗握るような迫力が伝わってきます。
さらに、伊福部昭先生の音楽が全編を通して力強く響きわたるのも本作の魅力のひとつ。勇壮で重厚な旋律がシーンの迫力をさらに引き立ててくれます。ただ、あまりに密度濃く流れ続けるその音楽に、観ている側のテンションが追いつかず、ラストに差し掛かるころにはどこか気力を使い果たしたような気分になる瞬間も。
それでもやはり、ゴジラとアンギラスがタッグを組む姿からは、まるで先輩後輩のような関係性が感じられ、彼らの絆を通して新たな視点で怪獣映画を楽しめたことは大きな収穫でした。互いに信頼し合いながら共闘する姿は、どこか人間的なドラマ性すら漂わせ、単なる怪獣同士の戦い以上の魅力を生んでいました。
ガイガンのインパクトに始まり、漫画家の主人公の奮闘、強い女性の活躍、そしてゴジラとアンギラスのコンビネーションと、見どころが盛りだくさんの90分。最後にはちゃんと爽快な気分でおしまいを迎えることができる、まさに特撮エンタメの醍醐味が詰まった作品です。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/09/22 Hulu
監督 | 福田純 |
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特殊技術 | 中野昭慶 |
脚本 | 関沢新一 |
出演 | 石川博 |
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高島稔 | |
梅田智子 | |
村井国夫 |
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