●こんなお話
伝説のスナイパーのウィル・スミスとクローンの若いウィル・スミスが揉める話。
●感想
本作はハイフレームレートや3Dといった最新の映像技術を駆使しており、その点では非常に革新的な映画であると言えます。映像表現の豊かさは観光映画としての魅力も兼ね備えており、多彩なロケーションを飛行機で移動しながら次々と見せてくれる美しい景色は、鑑賞者にとって満足感の高い体験となっています。映像の迫力と壮大さが作品全体を彩っているため、視覚的な楽しみは十分に感じられました。
ただし、その映像技術の新しさを除くと、物語のテンポや内容に関してはやや静かな印象を受ける部分もありました。冒頭で主人公が任務を達成した後、すぐにクローン兵士と激しい戦いが繰り広げられるのかと思いきや、実際には主人公の友人や知人との日常的な会話シーンにかなりの尺が割かれているため、序盤はややゆったりとした展開が続いています。この点が観る方によっては少し物足りなさを感じる要素かもしれません。
特に会話の多くは、登場人物たちがほぼ棒立ちのまま説明的な台詞を交わすスタイルで進んでおり、やや眠気を誘うような印象も受けました。なかでも敵役のクライブ・オーウェンが絡む場面は、説明台詞中心で進むため、私個人としては早く次の展開に移ってほしいと感じることが多かったです。主人公のヤングウィル・スミスと父親役のクライブ・オーウェン、そしてオールドウィル・スミスとの間で揺れ動く感情描写も、ややあっさりと進み改心の過程が簡潔に見えてしまい、もう少し丁寧に描かれていればより感情移入できたかもしれません。
その中で一番の見どころは、コロンビアでのヤングウィル・スミスとのファーストコンタクトのアクションシーンです。パルクールのように建物を飛び回りながらの追跡劇や、長回しを思わせる銃撃戦、さらには迫力満点のバイクチェイスは、圧倒的な迫力で目が離せませんでした。クライマックスの傭兵部隊との戦いも、まるでテレビゲームのようなスピード感とエネルギーが溢れており、ガトリングガンの描写がまるでレーザーのように映し出されるシーンやスローで破壊されていく建物内の描写も非常に盛り上がりました。
ただ、暗闇の中での高速の殴り合いのシーンなど、一部では何が起こっているのか分かりにくい部分もありました。映像の迫力を重視した結果、動きが速すぎて見づらい場面が少々あるのは惜しいと感じます。
また、物語の展開としては、主人公が簡単にセスナ機を手に入れて大陸を自由に移動したり、DNA鑑定が瞬時に行われて敵の正体が判明するといった展開はやや現実離れしているため、少し気になる部分もありました。ただ、それらはスピーディーな物語進行のための演出と理解すれば、気持ちよく観ることも可能です。
総じて、本作は最新技術を大胆に導入し、映像の新たな可能性に挑戦した実験的な上映体験に近い作品と言えます。まるでアトラクションのような刺激と臨場感を楽しめる点で、映像技術や映像表現の革新に興味がある方には特におすすめできる映画です。
☆☆☆
鑑賞日: 2019/10/30 TOHOシネマズ川崎 2020/12/10 NETFLIX
監督 | アン・リー |
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脚本 | デイヴィッド・ベニオフ |
ビリー・レイ | |
ダーレン・レムケ |
出演 | ウィル・スミス |
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メアリー・エリザベス・ウィンステッド | |
クライブ・オーウェン | |
ベネディクト・ウォン |
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