●こんなお話
カエルが人間にアタックしてくる話。
●感想
科学薬品による環境汚染というシリアスな題材を軸にしながら、どこか突き抜けたノリで突き進むB級テイストの作品。序盤は、レズビアンの女性科学者である主人公が、小さな町で起こる異変の真相を探るために、地元の保安官と共に調査に乗り出す姿が描かれる。静かな湖畔の風景の中に、不穏な空気が徐々に広がり、やがて生物への影響が明らかになっていく。その描写は比較的丁寧で、ジャンルにしては真面目に描かれている印象も受けました。
上映時間は80分とコンパクトながら、フロッグマンが登場するまでの展開が非常にゆっくりで、実際に人間大のカエルが暴れ出すまでに物語の半分近くを費やしています。そこまでは、「なぜフロッグマンが誕生するのか」という説明が延々と続いていく。もう少しテンポを上げてくれたら…と思わずにはいられなかったですが、その分、前半の町の描写や主人公の背景などに時間が割かれていたとも受け取れました。
やがて登場するのが、この作品のタイトルにもなっているフロッグマン。彼の登場によって、物語は一気に別方向へと舵を切る。着ぐるみ感満載の巨大カエルは、人間の女性を求めて町をさまようという、ある意味とてもインパクトのあるキャラクター。しかも、彼の行動原理はほぼ“性欲”のみ。女性を追い回す姿が続き、それに対応する登場人物たちの真剣な表情とのギャップが、妙に可笑しくて笑いがこみあげてしまうものでした。
中でも印象的だったのが、アメフト会場へと乗り込んだフロッグマンが、選手をラリアット一発でなぎ倒すシーン。強いのか弱いのかよく分からない描写もまた味わい深く、B級作品ならではの“場当たり的な強さ”が逆に魅力に感じられました。
さらに、クライマックスでは、主人公の博士がなんとお色気作戦に出て、フロッグマンを誘惑しようとする場面が挿入される。しかも上半身を露わにしながらの接近。知的で冷静だったはずのキャラクターが、突如として破天荒な行動に出る展開に、観ていて思わず混乱してしまった方も少なくないかもしれないです。
そして迎えるエンディングは、突然のダンス。これまでの物語とは完全にトーンの違う、突飛な演出によって締めくくられる。あまりの唐突さに驚きつつも、「最後まで突き抜けた姿勢を貫いた」という印象も受けました。
総じて、本作は“フロッグマン”という存在が登場することで、せっかく築き上げていた雰囲気や世界観が一変するという作品でしたが、ジャンルの特性を理解した上で楽しめば、突き抜けた娯楽として鑑賞できる部分も多く、個人的にはこういったテイストの映画が時折見たくなる気持ちにもなりました。なんとも独特な後味が残る80分だったと思います。
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鑑賞日: 2013/04/06 DVD
監督 | コディ・ジャレット |
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脚本 | コディ・ジャレット |
出演 | クリスティ・ラッセル |
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ジェームズ・デュヴァル | |
メアリー・ウォロノフ | |
ジョン・ポジノ |