●こんなお話
魔法動物を捕まえる主人公たちの話と人間界と魔法界が揉めそうになる殺人犯を追いかける話。
●感想
イギリスからニューヨークにやって来た主人公は、魔法動物を連れて旅をしている青年。彼が街に降り立った目的は一見すると静かなものだったが、銀行に融資を申し込みに来ていたパン屋開業を夢見る男性と、うっかりカバンを入れ違えてしまったことから、事態は大きく転がり始める。さらに、魔法を使う姿を偶然目撃した魔法使いに捕まり、魔法界へと引き込まれそうになる。一方で、政治家たちから「フリークス」と呼ばれる人々が何やら特別な力を秘めている様子も描かれていく。
ハリウッド大作らしいCG映像はさすがの迫力で、摩天楼を背景にした魔法の光や街を駆け抜ける生き物の質感は目を引く出来栄えでした。主人公とカバンを入れ違えたパン屋の男性も愛嬌たっぷりで、雨の中、彼と気になる女性が交わすキスシーンは本作屈指のロマンチックな場面に感じられました。
ただ、主人公は常におどおどしていて、自分でも「他人をイライラさせる」と口にするほど。劇中で果敢な行動を見せる場面は少なく、なぜあんな簡単に開くカバンに危険な魔法動物を詰め込んでいたのか、素直に疑問を抱いてしまいます。彼のミスで魔法動物がニューヨーク中に逃げ出し、街は大騒ぎになるものの、描かれるのは光り物好きのモグラのような生き物が中心で、他の動物の特徴や数はほとんど説明されません。そのため捕獲シーンもあまり盛り上がりを感じにくくなっていました。
同時進行で魔法省内の政治的な騒動も展開されますが、主人公はその本筋から外れた立ち位置におり、むしろパン屋の男性とヒロインの妹の恋模様のほうが魅力的に映ります。ただ、この恋愛もいつの間にか互いに惹かれ合い、気づけばキスシーンという進展の速さで、観客としてはやや置いてけぼりを食らった感覚がありました。
また、コリン・ファレル演じる人物の正体が明かされるシーンは、事前情報なしで観られた人には驚きが大きく、宣伝の巧みさを感じます。ただ、その変身を経ても「彼は結局何者なのか」という疑問は残り、原作を知らないと人物像が掴みにくい印象でした。さらに、人間を「マグル」と呼んだかと思えば「ノーマジ」と言い、時には「ヒューマン」とも口にするあたり、ファンでなくとも首をかしげたくなる用語の使い分けもありました。
最終的に、主人公の魔法動物集めよりも、パン屋の彼が夢を叶えたその後の物語をもっと見てみたいと思わせる、不思議な後味を残す作品でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2016/12/08 TOHOシネマズ川崎 2023/01/07 NETFLIX
監督 | デイビッド・イェーツ |
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脚本 | J.K. ローリング |
出演 | エディ・レッドメイン |
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キャサリン・ウォーターストン | |
ダン・フォグラー | |
アリソン・スドル | |
エズラ・ミラー | |
サマンサ・モートン | |
ジョン・ヴォイト | |
カーメン・イジョゴ | |
コリン・ファレル |
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