●こんなお話
蒲田の撮影所でスター俳優と大部屋俳優の友情と女優さんの話。
●感想
物語は東映の撮影所から始まる。大スター俳優がライバルとアップの数を競い合い、相変わらずのプライドをむき出しにしているが、最近は落ち目気味。酔って弱音を吐くスターを励ますのは、大部屋俳優の主人公。地味だけど真面目で熱い心を持った男だ。スターを家に送ると、妊娠中の恋人が待っていた。
スキャンダルを避けたいスターは、自分の代わりに恋人を置いていくと言い出す。戸惑いながらも了承する大部屋俳優。そこから彼の奮闘が始まる。病気で入院した恋人のために、危険なスタントや雑用仕事を次々に引き受けて、心身ともにボロボロになりながらも全力で働き続ける。
一方でスターはというと、新しい恋人候補ができそうだから自分の良さを彼女に説明しておいてくれと無茶ぶり。大部屋俳優はそれもこなす。恋人のために家を改装したりと、誠実で献身的な姿に恋人の心が動き、結婚を決意。大部屋俳優の実家に一緒に行き、母親から息子を託される形で温かく迎えられる。
恋人のお腹は大きくなり、二人は幸せな家庭を築いていく。ところが撮影所で、仕事が減ってふてくされているスターと再会。恋人に「やっぱり結婚しよう」と突然言い出すスター。自分の存在意義が薄れていくことへの焦りから、失踪騒動まで起こしてしまう。
スターを救おうと、大部屋俳優は命の危険が伴う「階段落ち」を受ける決意をする。生命保険の契約や会社からのプレッシャーもあり、恋人は止めようとするが、もう止まれない。大部屋俳優は、撮影所でのクライマックス「池田屋騒動」の撮影に挑む。
すべてが集約されたような壮絶なラスト。階段を転げ落ちて、画面には笑顔が広がる。あの有名な主題歌「♪虹の都、光の港、キネマの天地」が流れ、最初から最後まで感情が揺さぶられっぱなしの映画でした。
笑いあり涙あり、友情と昭和らしい男女の関係、そして何より“映画を作ること”への熱い愛と情熱が詰まっていました。登場人物はみな魅力的で、主人公3人のキャラがとにかく最高。演劇的で大げさなお芝居も、作品の世界観にぴったりハマっていて心地いいです。自己中心的で他人の人生を引っかき回す銀ちゃんの存在感は、まさにスターの狂気とカリスマそのもので圧倒されました。
物語の展開も止まることなく怒涛のように進んでいき、何度も心を持っていかれました。映画を作る現場の楽しさ、苦しさ、厳しさ、そして完成したときの喜び。そのすべてが詰まっていて、映画人による映画人のための、そして観る人の心にも真っ直ぐ届く映画でした。
☆☆☆☆☆
鑑賞日:2012/03/09 DVD 2023/11/19 Hulu
監督 | 深作欣二 |
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脚本 | つかこうへい |
原作 | つかこうへい |
製作 | 角川春樹 |
出演 | 松坂慶子 |
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風間杜夫 | |
平田満 | |
高見知佳 | |
原田大二郎 | |
蟹江敬三 |