●こんなお話
流浪のドライバーが久しぶりにF1のチームに参戦してダメダメチームを強くしていく話。
●感想
物語は主人公がクラッシュする夢で目を覚ますところから始まる。トレーラーで目を覚ました彼は、黙々と身支度を整え、車へと向かう。彼の一日は、レースに参加して勝つこと。華やかな表彰式の後、スカウトを受けるも、彼はその申し出を断り、次の街へと旅立つ。
しばらくして、コインランドリーで洗濯物を待っている最中、かつてのレーサー仲間が現れる。旧友はF1チームを立ち上げたばかりで、主人公にぜひ参加してほしいと誘う。しかし主人公は即座に断り、その場を離れる。
それでも、後日そのチームの練習場に彼が現れる。新しい環境で若手レーサーたちと走りながら、彼は少しずつチームの中に溶け込んでいく。彼のレースは常に反則すれすれのギリギリを攻めるスタイルで、周囲は驚きつつも、その走りに目を奪われていく。
しかし順調な道のりばかりではなく、彼のアドバイスを無視して若手の一人が無謀な追い越しをかけ、クラッシュ。激しく母親に詰められる主人公の姿も描かれる。それでも時間が経つにつれて、チームの仲間たちの技術も精神も磨かれていき、世界各国のレースで着実に順位を上げていく。
設計士としてチームに加わった女性とも親しくなり、恋愛関係へと発展。ふたりの関係も順調に見えたが、新たに開発された車に不正疑惑が浮上し、大会での使用が禁じられてしまう。旧型のマシンで戦わなければならなくなり、主人公の怒りが爆発する。
その中で、主人公の身体が限界を迎えていることが判明する。次にクラッシュすれば命の保証はない。かつての仲間は彼のレース参加を止めようとするが、主人公は耳を貸さない。さらに新たなチームを組まないかと、裕福なスポンサーから好条件で誘いが舞い込むが、主人公の目はひとつの方向だけを見据えていた。
最後のレース。主人公はチームと共にレースに参加。チームの仲間たちが、それぞれの持ち場で全力を尽くし、誰もが1ミリでも前に進もうとする姿が描かれる。そして、その果てに何が待っているのか——。
本作は、才能ある者が集まり、最初はバラバラだったチームが少しずつ結束し、世界へと挑んでいく、スポーツ映画としての高揚感がしっかり味わえる作品でした。主人公が現れて、その存在に触れた人々が変わっていき、やがて主人公がまた去っていくという構成がまるで西部劇の構図でもあり。
映像面では最新の技術を駆使したレースシーンの迫力が際立っていて、各国を舞台にした場面転換も華やかで見応えがありました。車のフォルムやエンジン音、クラッシュの衝撃に至るまで、細部に渡ってリアリティが感じられ、スクリーン越しにその熱を感じ取ることができたと思います。
一方で、155分という上映時間はやや長く感じられたのも事実です。主人公と女性設計士の恋愛パートは少し間延びしてしまった印象もあり、特にラスベガスのバルコニーでの会話などは、個人的には物語の熱からやや外れて感じられてしまいました。
それでも、主人公のレースにおけるギリギリの判断力と行動が、少しずつ周囲を変えていき、最後にはそれぞれのキャラクターに見せ場が用意されるクライマックスへとつながっていく流れは胸が熱くなりました。力を合わせて勝利を目指す展開にはやはり魅力があり、全体として楽しませてもらえた作品です。
☆☆☆
鑑賞日:2025/06/29 イオンシネマ座間
監督 | ジョセフ・コシンスキー |
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脚本 | アーレン・クルーガー |
原案 | ジョセフ・コシンスキー |
アーレン・クルーガー | |
製作総指揮 | ダニエル・ルピ |
プロデューサー | ジェリー・ブラッカイマー |
出演 | ブラッド・ピット |
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ダムソン・イドリス | |
ケリー・コンドン | |
ハビエル・バルデム |