映画【夢】感想(ネタバレ)

dreams
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●こんなお話

 夢の話。

●感想

 第1話の【日照り雨】。少年がお天気雨の中、狐の嫁入りを見る夢。少年は誰だかわからないけど、冒頭、少年が立っている板塀の表札に「黒澤」と書いてあるので少年時代の黒澤監督だというのがわかります。
 第2話の【桃畑】も少年時代の夢で連作のようになっていて、どこか懐かしさを感じてしまうのが不思議です。明治時代なのに何故そのような気持ちになるのか。
 第3話の【雪あらし】は、、これは見てて重たく結構つらかったです。雪女の執拗なまでのアタックが見ててかなり疲れました。
 第4話の【トンネル】。これが8つの挿話の中で1番好きで、黒澤映画っぽいエネルギーを感じる画面の力強さでした。全滅したはずの第3小隊がトンネルの真っ暗闇から出てくるところの明るさと暗闇を利用した映像美。
 第5話の【鴉】。ゴッホの絵の中に入っていく冒頭。ゴッホの絵が動きだし、カラフルで明るい映像。跳ね橋の上の馬車や洗濯していた女性が動き出すのが楽しい気持ちになりました。画面は明るく楽しいのに話は酷く暗い。自画像が上手く書けずに自らの耳を切り落としたゴッホ。耳を切り落とすなんて、なんて悲しい話なんだおう。
 第6話の【赤富士】は、富士山が爆発して原発が壊れて、放射性物質に色がついて人類が滅びるという。311後に見ると、何とも言えない気持ちになる話でした。ストロンチウムやセシウムなんて言葉が出てきて、予言してたかのような話。とはいえ、ちょっと重たいです。
 第7話の【鬼哭】もそうで、放射能の影響で人間が鬼になってしまって、という話ですが。台詞で全部説明してしまうのが見てて退屈でした。
 第8話の【水車のある村】。綺麗な川が流れが、いきなり映りますが。果たして映画でこれほど美しい水の流れを見た事があるのかというくらいの美しさ。川底の水藻がそよいでるのを見るだけでも落ち着きます。そして川のすぐそばの岸には色とりどりの花が咲き乱れる。そして水車小屋にいる笠智衆さん演じる103歳の老人の不思議な長台詞。そのまま豪華で華やかな葬式。この葬式の素晴らしいことったらなくて、人間こんな死に方ができたらいかに幸せかと。極楽とはこのことで、まさに夢の世界。

 いらない話もあるかな? とも思わなくはないですが、新しい芸術映画として惹きつけられる映画で面白かったです。

☆☆☆

鑑賞日:2013/06/11 Hulu

監督黒澤明 
脚本黒澤明 
出演寺尾聰 
倍賞美津子 
原田美枝子 
根岸季衣 
井川比佐志 
いかりや長介 
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