●こんなお話
両親を殺害されて生き別れた兄弟が1人はアメリカ、1人は香港で育って再会して両親のカタキを討つ話。
●感想
開通を祝う華やかなテープカットの瞬間を経て、都市と都市をつなぐトンネルのニュースが流れる中、赤ちゃんを抱いた建築家夫婦が帰宅の道を急いでいた。どこか満ち足りた空気のなか、不意に訪れる暗転。彼らの笑顔は次の瞬間、無慈悲な刃によって途切れる。命を奪われた夫妻の傍らで泣く双子の赤子。そこへ駆けつけた友人と、屋敷で働く一人の女性が、それぞれの命を預かるように二人を抱きかかえ、別々の道を歩ませる。こうして運命に引き裂かれた兄弟は、遠く離れて育てられることとなる。
時は流れ、アメリカで空手とエクササイズの教室を開いて暮らす主人公は、育ての親でもある“おじさん”と日々を過ごしていた。ふと告げられる「香港に行くぞ」という一言。理由も聞かぬまま荷造りをし、異国の空気を吸い込む。そして、ある夜。眩しく光るクラブで誘われるまま女性と踊っていた主人公は、背後から鈍い一撃を受けてそのまま倒れ込む。
目を覚ました時、そこには自分と瓜二つの男が立っていた。事態が飲み込めぬ中、おじさんから語られる過去。あの夜に離れ離れとなった双子の兄弟。その兄が香港で密輸に関わっており、今まさに危険の渦中にあるのだという。弟である主人公は兄と行動を共にし、ある交渉の場に向かうが、突然の警察の突入によって状況は一変。船で逃げ出すなか、弟の機転で積んでいた車を海に落とし、何とか速度を上げて振り切る。
一方、兄の恋人は敵方の実業家のもとで秘書として働いており、密かに資料を探るよう兄から依頼を受けていた。しかし、別の秘書の目に怪しまれるなど、緊張が走る日々が続く。弟は街で兄と間違われ、黒社会の人々から危険な依頼を持ちかけられるが、きっぱりと断る。だがその意志も虚しく、暴行され路上に投げ出される。
やがて主人公たちは敵のクラブに潜入し、爆弾を仕掛けて一発逆転を狙うが、計画は露見。逆に追われる立場となってしまう。そんな中、恋人が重要な資料を見つけ出し、報告しようとするが、電話を受けたのは弟だった。危険を察知した弟はただ一人で彼女を助け出し、追手から逃れる。やがてアジトにたどり着くも、兄の胸には嫉妬の炎が静かに燃えていた。恋人と弟の関係を疑い、激しくぶつかるふたり。
怒りを露わにするおじさん。敵が誰かをようやく口にするが、それより早く新たな危機が訪れる。ふらつきながら目を覚ます双子のもとに、敵の襲撃。おじさんと恋人が拉致されてしまう。双子は息を合わせて追いかけ、巨大タンカーのような場所に乗り込む。そして互いに親玉と対峙し、それぞれの手で決着をつける。ようやく長い夜が終わりを迎える。
ジャン=クロード・ヴァン・ダムが一人二役で兄弟を演じていますが、2倍のアクションが展開されるかと思いきや、意外と落ち着いた内容になっておりました。ときどき見せる奇抜なタイツ姿なども含め、ヴァン・ダムを眺める映画として楽しませていただきました。
双子が再会してからは香港を舞台に派手な展開が続くかと思いましたが、意外にも隠れ家でじっとしている時間が長く、全体的にテンポが緩やかだった印象を受けました。ただ、その分、キャラクターの関係性に重きが置かれていて、兄弟のすれ違いや感情の揺れが丁寧に描かれていたように感じます。
中でも、兄が恋人を弟に取られたと誤解して泥酔するシーンは、少し可笑しくも切ない場面となっており、思わず笑ってしまいました。演技も情感たっぷりで、ここだけでも観る価値があると感じさせてくれる一幕です。
敵役のキャラクターたちも非常に魅力的で、筋肉隆々の男たちや、鋭い眼差しの秘書など、強者揃いで見応えがありました。肉弾戦に二丁拳銃、派手なアクションも各所に用意されており、盛り上がる場面ではきちんと盛り上がるつくりになっていたと思います。
銃撃戦に関しては、ややのんびりとしたテンポで進行することもあり、90年代ハリウッドらしい味わい深さがありました。ですが、終盤に繰り出されるヴァン・ダムの回し蹴りの連続は爽快で、しっかりと締めてくれた印象です。
また、敵役として登場するアジア人の俳優も迫力満点で、その肉体と存在感が画面に厚みを与えておりました。全体として、アクションとキャラクターの魅力が程よくバランスされた一作だったと思います。
☆☆☆
鑑賞日: 2017/05/13 DVD 2024/01/23 Amazonプライム・ビデオ
監督 | シェルドン・レティック |
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脚本 | シェルドン・レティック |
ジャン・クロード・ヴァン・ダム |
出演 | ジャン・クロード・ヴァン・ダム |
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ジョフリー・ルイス | |
アラン・スカーフュ |
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