●こんなお話
実際にあった海上油田での原油流出事故をモチーフにした映画。
●感想
ハリウッドの大作らしく、爆発や火災の映像には圧倒されるものがあり、視覚的な迫力は映画館で体感するのにふさわしいものでした。冒頭は、何気ない日常が描かれる中で、どこか不穏な気配が少しずつ漂っていき、まるでホラー映画のようにじわじわと恐怖が忍び寄ってくる演出も印象に残ります。そして、事故が発生した瞬間から、息もつかせぬ展開に一気に引き込まれていきました。
エピローグで実際の事故で命を落とした方々の写真が映し出される演出には胸を締めつけられる思いがあり、事故が現実に起きた出来事であることを強く意識させられました。映画というフィクションを観ているつもりでも、突然現実を突きつけられたような感覚に襲われて、やるせなさが込み上げてきます。関係者ではない観客でさえこうした感情になるのですから、遺族や関係者の方々はこの作品をどのような気持ちで受け止めるのだろうと、自然と考えてしまいました。
事故の後は緊張感のあるパニック描写が続いていきますが、それに比べると序盤の日常描写はやや冗長に感じられました。現場の作業員たちと、会社側の利益優先の姿勢が対立するという構図はわかりやすくはあるのですが、いかにもハリウッドらしい善悪が明確な展開で、少し説明的に過ぎる印象もあります。また、作業の中身があまり具体的に描かれていなかったため、テストが行われているのか、どんな手順で何を確認しているのかという部分がやや曖昧で、その点で没入感が削がれてしまったようにも思いました。
実際に事故が起きてからも、画面上の位置関係が把握しにくい場面が多く、例えばクレーンが倒れるシーンなどで、登場人物がどこにいて、クレーンがどこにあるのか、どの方向に倒れていくのかといった動線が見えづらいため、何が起きているのかが一瞬わからなくなることもありました。自己犠牲のシーンなども、その状況の把握が曖昧だったことから、感情が入り込みにくかったのが正直なところです。
また、作業員たちが油にまみれ、ヒゲで顔が覆われているため、誰が誰なのかを見分けるのが難しく、退場した人物が誰なのかが明確にならない場面もありました。そのため、せっかくのドラマチックな展開も、人物を追いきれず感情がついていかないまま進んでしまう印象が残ります。
とはいえ、炎に包まれ、煙にむせながら必死に命をつなごうとする姿は、スクリーン越しにも伝わってくるもので、鑑賞後にはどっと疲労感が残る作品だったと感じます。実話をもとにしたという重みと、映像の迫力、そして命のやりとりを描く緊張感。さまざまな要素が詰め込まれていて、観た後にいろいろと考えさせられる時間をもらえる作品でした。
☆☆☆
鑑賞日: 2017/04/28 チネチッタ川崎
監督 | ピーター・バーグ |
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出演 | マーク・ウォールバーグ |
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ディラン・オブライエン | |
カート・ラッセル | |
ジョン・マルコヴィッチ |
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