映画【バンコック・デンジャラス】感想(ネタバレ):ニコラス・ケイジが魅せる、最後の殺し屋の旅

BANGKOK-DANGEROUS
スポンサーリンク

●こんなお話

 凄腕の殺し屋がタイで最後の仕事をしようとするけど、弟子を取ったり恋をしたりする話。

●感想

 「俺は根無し草」という独白から物語が始まる。主人公は長年、殺し屋としての人生を歩んできたが、そろそろ引退を考えているという。最後の仕事として、バンコクで4件の依頼をこなすべく、タイへとやって来る。異国の地で孤独な仕事を進めるなか、通訳兼運び屋として現地の若者を雇い、淡々と任務をこなしていく。

 最初は互いに距離を保っていたものの、若者の純粋さに触れ、主人公は次第に心を開き、自らが長年守ってきた「誰とも関係を持たない」というルールを破り、殺しの技術を教え始める。静かに流れる時間の中で、かすかに師弟のような関係が築かれていく。

 任務の合間、怪我の治療のために訪れた薬局で、ろうあの女性と出会い、一目で惹かれるものを感じた主人公は、思い切って食事に誘う。言葉を介さず、手話と身振りで会話を重ねるうちに、心の距離は徐々に縮まり、二人は穏やかな時間を共有する。しかし、幸せな時間は長くは続かず、デート中に突然刺客に襲われる。女性は主人公が人を殺す現場を目撃し、何も言わずにその場を去ってしまう。

 女性の家を訪れても再会は叶わず、彼女は黙って扉を閉める。自分の感情を押し殺すようにして、主人公は再び一線を引いた殺し屋としての生き方に戻っていく。弟子との距離も遠のき、かつて抱いた人間らしい情が消えていく。

 そんな中、4件目の依頼の標的が、社会のために尽力する清廉な政治家であることを知り、主人公は殺しの手を止める。依頼を断ったことで裏社会から追われる立場となり、弟子も捕まり、拷問の末に主人公の居場所を吐かされてしまう。次々と送り込まれる刺客との戦いを繰り広げながら、主人公は弟子を救うべく、敵のアジトに乗り込んでいく。

 物語全体を通してアクション映画の枠組みには収まっているものの、肝心のアクションの見せ方に関しては、やや平坦に感じられる部分が多かったように思います。マシンガンで車を撃ち抜くシーンや、プールで溺れさせる演出、水上バイクでの追走劇など、それぞれに派手さはあるものの、編集のテンポやカメラの動きが騒がしく、全体の流れがつかみにくかった印象です。

 また、弟子が人質に取られる終盤の展開でも、盛り上がるべきアクションがどこか既視感のある映像となっていて、ジョン・ウー作品のような華やかさや躍動感までは届かず、やや物足りなさを感じてしまいました。

 恋愛描写に関しても、主人公と女性との関係が唐突に進展し、薬局での出会いから実家の両親に紹介されるまでが非常に早く、感情の流れがあまり感じられなかったのが残念でした。弟子との訓練パートも短く、あっさりとまとめられていて、関係性が深まる過程がもう少し描かれていればと感じました。

 全体として、ニコラス・ケイジがタイを舞台に、観光の合間に事件に巻き込まれているような、そんな空気感の作品に思えてしまうところもありました。とはいえ、異国の風景や現地の空気感など、異文化を背景にした作品ならではの雰囲気を楽しめる要素はあったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2023/04/17 Amazonプライム・ビデオ

監督オキサイド・パン 
ダニー・パン 
出演ニコラス・ケイジ 
チャーリー・ヤン 
シャクリット・ヤムナーム 
ペンワード・ハーマニー 
タイトルとURLをコピーしました