ドラマ【ブレイキング・バッド SEASON 2】感想(ネタバレ):科学と犯罪が交錯する、危うくも鮮やかな物語

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●こんなお話

 化学教師ウォルターホワイトと相棒のジェシーの商売が広がりそうになっていく話。

●感想

 かつて高校の化学教師だったウォルター・ホワイトは、がんを宣告されたことで人生が一変する。家族に遺すお金を稼ぐため、自らの知識を活かして覚せい剤の製造に乗り出した彼は、元教え子ジェシーと共に危険な世界に足を踏み入れていく。初めは小規模だった取り引きも次第に拡大し、ついには凶暴な売人トゥコとの接触にまで発展する。

 トゥコは一触即発の狂犬のような男で、常に緊張感をまとっており、少しのきっかけで暴力に訴えるような危険な存在だった。そんな相手との取引は当然ながらスムーズには進まず、ウォルターとジェシーは命の危機に直面することになる。砂漠で薬を作る最中にガス欠で身動きが取れなくなり、極限状態に追い込まれるという出来事もありながら、それでも二人はギリギリのところで生き延びていく。

 その裏で、ウォルターの私生活にも大きな変化が訪れる。家族に秘密を抱えたまま暮らす彼の姿に、やがて妻スカイラーが不信感を募らせ、ついには不倫を疑い始める。ジェシーの方も、実家を追い出されるという展開の中で新たな住まいを見つけ、そこで隣人の女性と徐々に心を通わせていく。一方、彼の薬物依存は少しずつ深刻になっていき、ドラマに陰りと悲しみが滲み始める。

 売人の仲間たちが敵対組織に殺害されるという事件をきっかけに、ウォルターたちは新たな販路を模索することになり、そこに登場するのが怪しげな弁護士ソウル・グッドマン。軽妙な語り口と大胆な手腕で、ファストフードチェーンのオーナーでありながら裏社会の顔も持つガスとの橋渡し役を担うことになる。この辺りから物語のスケールがさらに広がり、緻密に組み立てられた構造の中でさまざまな伏線が少しずつ繋がっていく。

 ウォルターは医療費の問題を解決するため、かつての研究仲間に援助を求めたり、息子が募金活動を始めたりと、正攻法と違法行為の両方を行き来しながら綱渡りのような日々を送る。義理の弟ハンクが捜査官として麻薬組織の摘発に全力を注ぐ中で、彼もまた危険な現場に巻き込まれていく。ある任務では爆発に巻き込まれそうになり、その後、深刻なトラウマを抱えることになる。

 映像は非常に洗練されており、構図や色彩の演出が巧みにストーリーと呼応している印象を受けました。細部まで作り込まれた映像世界の中で、静かなシーンにも緊張感が漂い、視聴者の感情を引き込む力を強く感じました。そして、何層にも折り重なる物語構造が非常に面白く、予測不可能な展開に何度も息を呑みました。

 特に印象深かったのは、主人公が中毒状態に陥ったジェシーを救おうとする場面。人間としての良心と、冷静な判断の間で揺れながら、ある人物を見捨てるという選択をしてしまう。この決断が後にとてつもない悲劇を引き起こす展開には、言葉を失うような衝撃がありました。冒頭に映る赤いウサギの人形が、最後に何を意味していたのかが明かされたときの怖さは、視覚と物語が結びついた強烈な瞬間だったと思います。

 スカイラーは夫の行動に疑念を抱き、ついには家を出てしまう。一方でジェシーは心を寄せた女性との別れと薬物の影響で心身ともに崩れていき、見ていて胸が痛くなりました。この先、彼らの関係や運命がどうなるのか、続きが気になって仕方がありません。息もつかせぬ展開の連続でありながら、人物それぞれの感情や背景が丁寧に描かれていて、深く没入できる作品でした。

☆☆☆☆☆

鑑賞日:2014/08/18 Hulu 2022/12/14 NETFLIX

監督ヴィンス・ギリガン
脚本ヴィンス・ギリガン
出演ブライアン・クランストン
アーロン・ポール
アンナ・ガン
ディーン・ノリス
ベッツィ・ブラント
RJ・ミッテ
ボブ・オデンカーク
ジャンカルロ・エスポジート
ジョナサン・バンクス
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