映画【名探偵ゴッド・アイ】感想(ネタバレ):盲目の名探偵が挑む、熱狂の香港ミステリー

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●こんなお話

 全盲の元刑事の探偵と女刑事が少女失踪事件を追いかけつつドタバタする話。

●感想

 冒頭から香港映画らしい軽快なテンポで物語が始まっていく。街中で洗剤を撒き散らして逃げる謎の男を、盲目の主人公が尾行していくシーンが本作の導入部。そこに女刑事が加わり、2人で協力しながら犯人を追いつめようとする流れになっており、序盤から一気に作品世界へと引き込まれていく。ハイテンションでユーモアにあふれたアンディ・ラウさんの演技が、作品全体を牽引していくエネルギーを放っていて、さっそく賑やかな香港コメディの空気に包まれる。

 物語の本筋は、女刑事から依頼を受けた盲目の名探偵が、少女の失踪事件を捜査していくという展開になる。けれども、この映画は単なるミステリーではなく、コメディ要素をふんだんに盛り込みながら進んでいくドタバタ劇が中心に据えられている。そのため、落ち着いたサスペンスを期待して観ると、テンポや演出に戸惑うかもしれないです。独特のノリに身を任せることができれば、そのリズムの中に潜む小気味よい面白さを味わうことができます。

 主人公は盲目ながら、事件に関わった人々の感情を想像し、自分自身の妄想世界の中でその人物と対話していくという特異なスタイルで事件の真相に迫っていく。ビジュアル化された妄想の中で、加害者や被害者になりきって推理を展開するこの演出は、ミステリー映画としては一風変わったアプローチに見えました。ただ、同様の描写は他作品でも見られるもので、手法としては新しさよりも親しみやすさを感じる部分が大きかったです。

 しかしながら、物語の中盤になると、本筋だったはずの少女失踪事件の捜査は一旦脇に置かれ、舞台はカジノに移ったり、かつて恋をした女性と踊るシーンが差し込まれたりと、かなり自由な展開へと変化していく。その瞬間ごとのシーンはどれも楽しく、主人公のキャラクターが光る場面も多かったですが、全体の流れとしてはやや足踏み感があり、核心へ近づいているという感覚が薄れていく構成だった印象も。

 再び物語が動き始めるのは、失踪した少女たちが過去に失恋を経験していたという共通点に主人公が気づいてから。そこから、タクシー運転手が怪しいと突き止め、強引な推理をもとに真相へと迫っていくことになる。ここからは一気に物語が動き、アクションシーンも増えていき、ついには盲目であるはずの主人公が車を運転するという大胆な展開にまで発展していく。

 コメディ、ミステリー、ラブコメディと、ジャンルが次々と混ざり合いながら進んでいくスタイルは、まさにジョニー・トー監督ならではの演出力とテンポの妙で成り立っていたと感じました。130分という時間も、詰め込まれた要素の数々と全体を包み込む熱気のおかげで、最後まで楽しんで観ることができる作品だったと思います。

☆☆☆

鑑賞日:2014/06/06 DVD

監督ジョニー・トー 
脚本ワイ・カーファイ 
出演アンディ・ラウ 
サミー・チェン 
グォ・タオ 
カオ・ユアンユアン 
ラム・シュー 
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